今までの公演
#249 |
荒川良々 「つよし先生のちんどっこい」 |
今回は独特の存在感がある怪優、荒川良々さん。それだけにどんなドラマになるか予測不可能でもある。そこで、用意されたセットは「道場」。本当に自由に、思いつつくままに暴れてもらおうという主旨である。その想像通り、いや期待以上に唯一無二のスジナシが完成した。
作務衣の鶴瓶に対し、ラフな格好の荒川。師匠と弟子の関係だろうか。開始早々先に仕掛けてきたのは荒川だ。置いてあるお茶を指差し「こうちゃんお茶取って」といきなり命令口調。衣裳に反して上下関係は逆のようだ。鶴瓶もこれには驚いたが、渋々ため息まじりに立ち上がる。するとこの“ため息”に過剰に反応する荒川。「なんだ!嫌か!!」と烈火の如く怒りまくる。「やります。お茶いれます」とややふてくされ気味に鶴瓶が発言をすると、それにも怒り出す。さらに鶴瓶が荒川を「お兄ちゃん」と呼ぶと、それに対しても「誰がお兄ちゃんだ!お前からお兄ちゃんと呼ばれることがあるか!俺が。何がお兄ちゃんだ!よくそんなことが言えるぞ!何がお兄ちゃんだ!いまさら(原文のまま)」と多少日本語が不思議なことになっているが、最初は鶴瓶を徹底的にたたく作戦のようだ。まずは上下関係をはっきりさせるという目的もあるのか。しかし一体何の道場かはさっぱり分からない。
するとおもむろに荒川が「じゃあやって、見ててやるから」と“何か”を披露することを指示する。何を求められているかは分からないが、鶴瓶はその場にそぐわない“フラダンス”を踊りだした。間髪いれず怒りだす荒川。「おい・・・○×★△・・・誰からドンてして・・・◇■☆◎・・・」怒りの余り言葉が付いていかず、支離滅裂な台詞で捲くし立てる。「“どっこい”だろ。“ちんどっこい”から」と荒川が言い放つ。
この道場は“ちんどっこい”の演舞を披露する場所で、荒川は師匠で鶴瓶は弟子らしいということがようやく分かった。
ところで“ちんどっこい”とは一体どんな踊りなのか?いや踊りでは無いかもしれない。知っている?のは荒川だけ。鶴瓶は“ちんどっこい”を想像力だけで創り上げなければならない。
鶴瓶の演舞・・・。太鼓が一発ドンと響く。鶴瓶がコミカルな感じで一歩踏み出す。次の瞬間、荒川が激怒。「鶴瓶が何かする」→「荒川激怒」。全てこの繰り返しではあるが、ここまで来ると凄く心地良い。今回の怒りの内容は、荒川の思っている“ちんどっこい”では無かったことが原因。そこで鶴瓶はつよし先生=荒川にもう一度どっこいを見せてほしいと頼む。それは“九州どっこい”“熊本どっこい”“佐賀どっこい”という別のバリエーションのもの。
荒川の演舞・・・。太鼓が一発ドンと響く。鶴瓶と違って切れのあるダイナミックな“九州どっこい”。ラストの踏み込みでジーンズがビリっと破れた音がしたが、なんとか誤魔化して演舞を終えた。
そして再度鶴瓶の演舞・・・。全く似ても似つかない“ちんどっこい”が始まり、荒川が激怒。そこで荒川が鶴瓶に問いただすと、その“ちんどっこい”はつよし先生ではなく佐久間先生のものと分かり、この日最大の荒川大激怒。この大激怒が何故だかシュールな思い出話へと変化していく。本当に何故だか分かりませんが・・・。川の土手の下で、羊羹と温かいレモン水を飲んだ2人の幸せだったころの話だ。荒川は凄く覚えているらしい。鶴瓶は全くのようだが・・・。
その話で気持ちが落ち着いたのか、どんな心境の変化があったのかは全く分からないが、荒川は自ら“ちんどっこい”を披露することになった。ダイナミックかつ繊細な動き、躍動感の中には生に対する喜びと同時に哀しさも表現された、見事な“ちんどっこい”を演じきったのである。・・OKで~す。
本当に不思議な世界観。独特の台詞回しと予想外の手足の動き。文章では絶対に伝わらない不思議な間。どれを取っても唯一無二のスジナシであった。