今までの公演

#126 波乃久里子

新派の大御所女優、波乃久里子さんの登場。中村勘三郎の娘、中村勘九郎の姉である。お母様の形見であるという絣(かすり)の着物に父親の勘三郎の形見の腕時計をしてスタジオに登場した。アドリブなんて自信が無いと言うことで、以前からスジナシを意識し自分も出る!と言い続けている中村勘九郎と前日にスジナシの稽古をして来たそうだ。「本番お願いします!」の声でスタジオに入る。設定は「台所」。「私が外からやって来るということにしたいんですが・・。」という波乃の希望を取り入れて鶴瓶が板付きでスタートする。鶴瓶がテーブルに顔を伏せて眠っているところに勝手口から怒った様子で波乃が入って来る。鶴瓶が顔を上げてビックリ!なんと波乃の姿は、絣(カスリ)の着物ではなくTシャツなのだ。スタート直前の早変わりをやってのけたのである。鶴瓶は波乃が着物であると思いこんでいたし、まさかその着物姿が一瞬のうちにTシャツになるとは思ってもみなかっただけに一瞬空白状態に・・。その後の展開は、話がうまく噛み合わない。と言うのも波乃は、鶴瓶の台詞や流れを全て否定し自分が描いたレールから外れないようにするのである。何はともあれスジナシには珍しい流れである。波乃は、夫である鶴瓶との結婚記念日で教会で待ち合わせをしていたのだが鶴瓶が来なかったことを怒っている。一方の鶴瓶は待ち合わせ場所はお前の実家だったと言い張る。しかし波乃は断固として受け入れないばかりか「何言ってるの?私にはもう実家なんて無いのよ。」と相手の台詞に合わせる素振りも無い。それまでしていた化粧を落としながら鶴瓶を攻める。そればかりか鶴瓶に美顔パックや化粧をさせて欲しいと言う。凄まじい波乃の勢いを牽制するために鶴瓶は相手を黙らせる作戦を立て、「おまえは実は癌なんだ・・」と衝撃の告知をするのだが波乃は、「あ、そうなの?」と軽く受け流す。「そりゃ人間なんていつかは、死ぬものだわよ。」と効果ゼロである。結局は、相手のペースに従わざるを得ない鶴瓶であった。鶴瓶曰く、「中村家はこんなすごい人たちの集まりなんです。」と個人的なつきあいの中でのエピソードを交えながらトークをする。これまでにイメージしていた新派の女優、波乃久里子には微塵も感じられなかった100%純粋の「人間、波乃久里子」が満喫できるスジナシである。

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