プロフェッショナルとしての技術や魂を受け継ぐ関係の『師匠と弟子』。世の中の第一線で活躍するプロも、師と仰ぐ恩人に対しては、いつまでも頭が上がらないものです。

サッカー日本女子代表“なでしこジャパン”の一員として2011年に史上初のFIFA女子ワールドカップ優勝を成し遂げ、国民栄誉賞にも輝いた丸山桂里奈さん。

現在はタレントとしてバラエティー番組にもひっぱりだこの、彼女の“師匠”とは…？

丸山さんのサッカーの師匠というと、どなたですか？

「本並健治さんです。元ガンバ大阪の選手で、私が大阪・高槻のチームにいた時に監督をされていて、一番のサッカーの師匠です。私、色んな監督にご指導いただいたんですが、自分が代表選手だったり、チームの中心選手だったりしたせいか、なかなか私に怒る人っていなかったんです。でも、本並さんにお会いして最初に言われたのが『もちろん代表選手だから中心選手として考えているけど、ほかの選手と同じように見るから』って。試合でも練習でも結構怒鳴られました。怖かったですよ、関西弁だし(笑)」

当時、どんなことで怒られましたか？

「練習日に京都のグラウンドで、私が相手を背負いながらボールを受ける練習をしていた時に、『低いパスで』っていうのが決まっていたのに、パスの精度が悪い子がいて高いボールばかり上げてきたんですね。私は彼女の練習にもならないと思ったので注意したら、それに対して本並さんが無茶苦茶私に怒ってきて。『お前の止め方が悪い』みたいな。全然納得できなくて食い下がったら、本並さんからこう言われたんです。『パスを出す側のミスって誰でも分かるし、本人が一番分かってる。けど、お前は日本代表選手。味方のミスをカバーできるくらいの力がないと俺は代表選手だとは認めない。相手のミスを責めるんじゃなくて、それをどうにかカバーするっていう方向に近づけたら、サッカー選手としてもそうだけど、人間としても大きく成長できると思うよ』って」

サッカーの指導だけにとどまっていないですね

「それ以来、どんな時でも柔軟に対応できるようになりました。例えば、今のバラエティー番組のお仕事で、ロケ中に急に走ることになって、走りやすい靴を準備してなかったとしても『スタッフさんの期待にこたえて番組をいい方向へ進められたら』って、できる限りの力を出そうと思う部分にはつながっている気がします」

新天地となったその芸能界には、師と仰いでいる方はいらっしゃいますか？

「山さんって呼んでるんですけど、南海キャンディーズの山里亮太さんです。実は芸能活動で最初にご一緒させて頂いた方なんです。テレビ番組だったんですけど、私は元アスリートなので普通の女性出演者と比べるとイジられる方だったんですね。で、その収録が終わってから山さんが私に『あの時ああいう風にいじったのは、こういう意味があるからだよ』って一つ一つ教えて下さって。私は勝手に『テレビの司会の人って怖いんじゃないか』って思ってたんですけど、本当に優しくて、そこでバラエティーの魅力を教わりました」

山里さんからの言葉で印象に残っていることはありますか？

「その時に言われたのが『ずっとこれからも、そのままの丸山桂里奈でいいからね』ってことで、今でも言われます。何がそのままでいいか、正直私にも分からないんですけど(笑)でも、じゃあ自分を信じて思うように進んでいいのかなって考えられるようになったのは、山さんがそうおっしゃって下さったからです」

丸山さんは、サッカーと芸能界それぞれで素敵な師匠に巡り会えたんですね

「本並さんも山さんも、私を“日本代表”とか“サッカー選手”とかの肩書でなく、一人の人間として見て下さるんです。本当の自分でいればいいってうれしいことですよね。人間味があって、愛がある。そんな二人の師匠です」