YouTube等で「笑いの多様化起きた」コメディーの追求続ける三宅裕司 今後“選ばれる笑い”とは

『温故知新』…故きをたずねて新しきを知る、つまり以前学んだ事柄や昔を顧みたり調べたりして、新しい知見などを得ることです。
1979年にミュージカル・アクション・コメディーの劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」(通称:SET)を旗揚げして今年でちょうど40年。長年エンターテインメントの第一線を走り続ける三宅裕司さんに単独インタビュー。
喜劇役者の先輩、伊東四朗さんとの思い出や、動画サイトやアプリなど多様化するエンタメ業界について伺いました。
いわゆる正式な“師弟関係”ではないということですが、三宅さんは伊東四朗さんとのご縁が大変深いそうですね。
「そうですね、私が自分のコント番組を初めて持つことができた時、最初のゲストが伊東さんでそのままレギュラーになって下さって、色んなことを教わりました。最初、緊張している僕に『三宅ちゃん、好きにやっていいんだよ』って言ってくれて。そこからすごくやりやすくなったのを覚えています。コントですから張り倒すシーンもあるわけなんですけど、そういう時でも『遠慮してたら面白くないからね』って。僕のことを殴る時も目茶苦茶痛かったですよ(笑)『俺を殴る時もこれくらいやるんだよ』という意味で見せてくれたんですよね。やりづらかったですけど、それで踏ん切りがつきました」
伊東さんから教わったことで、今も実践していたり気を付けていたりすることはありますか?
「伊東さんは作家が書くセリフをすごく大事にされていまして、勝手に変えることはなかなかしない方なんです。そのセリフを、どういう言い方とどういう間で、どれくらい面白く表現するかっていうね。僕らって仲間とかが作家だと『つまんないよコレ』って言って、すぐ変えてしまいがちなんです。でも伊東さんは、この業界に入った作家もプロだし、演じる方もプロだという中で、まず作家をリスペクトして、演者はそのセリフを変えないで最大限面白い表現をするというのがプロとしての付き合いだと。学びましたね」
舞台からラジオ・テレビ、今ではYouTube等の動画サイトやアプリなど、時を経るごとに新たな仕組みが生まれています。こうしたエンタメ業界の流れについてはどう感じていますか?

「すごくいいことだと思います。昔は映像のギャグをやろうとしても“8ミリ”。後からどう編集するかを考えながら撮って、フィルムを見て、切って、貼るわけですから。やる人はなかなかいなかった。それが簡単にできるようになって、若い映像作家がもっとたくさん出てくるんじゃないでしょうか。一方、1人1台好きな映像を見られるものを持っているわけですから、“笑いの多様化”がすごくあると思うんですよね。そうすると作る方としては、僕ならば『三宅裕司の笑いというのはこうなんだ』ということを明確にしてないと、お客さんがそれを選んでくれなくなるというか。笑いの幅が広くなった分、ひとつの特徴がないとダメだなと思いますね」
三宅さんは師弟関係で言うと今は主に『師』の立場ですが、どのようにご自身の芸を伝えていらっしゃいますか?
「僕も年齢的に引退が近づいていますから、SET(前述)を40年間やってきて、これを残すために小学1年から中学3年が所属する『こどもSET』というのを作りました。秋に大人の劇団員が演じた演目を翌年の夏休みに台本をそのままで子供達だけで演じるという企画です。子供たちにミュージカル・アクション・コメディーを伝えていこうと。子供たちが高校生くらいになった時に全てを身につけた役者になって、すごいエンターテインメント集団になってくれたらうれしいですね。今年10月に上演する劇団創立40周年記念本公演「ピースフルタウンへようこそ」も来年夏に子供達が演じます。大人は負けれませんよ(笑)」
スマホなどの普及で多様化した笑いの中で、お客さんに選んでもらえるものを作っていってほしいと?
「そういうことでもありますね。例えば、昔は関西のお笑いは東京では全然見られなかったんですよ、テレビでも番組をやってなかったですから。それに対して、今は海外を含めて全てのものが見られるわけです。そうすると、身につくことはすごく多いですよね。そこから『自分はこれだ!こういうものを作りたい』というのを早く思いついた人が、全てを吸収していいものを作っていくんだと思います」
<三宅裕司プロフィール>
1979年、ミュージカル・アクション・コメディーを旗印に劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)を創立、座長として出演しながら演出も手がける。映画・舞台・ドラマのほか、番組の司会やラジオパーソナリティーで活躍。今年10月から池袋サンシャイン劇場にて上演するSET創立40周年記念第57回本公演、演出出演する。
このインタビューは、プロが恩人である師匠と対面し、指導を受けた“下積み時代”を語り合うドキュメントバラエティ「師弟ご対面SHOW ~私、一人前ですか?~」(9月15日・14時からTBS系列で放送)のスピンオフ企画