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<論説コラム>郵便局に裏切られた!かんぽ不正の闇はどこまで続く?

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<論説コラム>郵便局に裏切られた!かんぽ不正の闇はどこまで続く?
その郵便局は沢山の牛と蝉の声に包まれていた。
沖縄県石垣島から船で30分、黒島は人口200人余りに対し牛が3000頭以上いるという離島である。祭りの絵が入った消印で自分に手紙を出そうと島の真ん中にある黒島郵便局に立ち寄った。同じことを考える観光客は多いのだろう。葉書を彩る沢山の楽しいスタンプ、冷たい飲み物と茶菓子のサービス、そして局員の皆さんの温かい笑顔が迎えてくれた。日本全国にある郵便局っていいな。


■不利益契約18万件の衝撃

その郵便局が大きく揺れている。かんぽ生命保険において、利用者に不利益な契約が明らかになった。当初は9万3000件と言われていた問題の契約数は、2019年7月31日の郵政3社トップの記者会見の場で、18万3000件と2倍に膨れ上がった。医療カルテによって契約時の状態が確認できる過去5年間の分というので、それ以前も含めればさらに数は多いであろうことは容易に想像できる。
新旧契約の保険料を半年以上も「二重払い」させていたり、契約の乗り換えと見なされ、担当者の営業手当が半分に減額されてしまうため新旧契約の間を故意に空ける「無保険」の状態があったり、その不利益契約の内容は信じられないほど杜撰で悪質なものだ。


■郵便局のブランド失墜

会見の冒頭で日本郵政の長門正貢社長は「郵便局に対する信頼を大きく裏切ることになり断腸の思い」と謝罪したが、まさにこの言葉の中に今回の問題の深刻さがある。「郵便局」というブランドの信頼失墜である。これを受けて金融庁も今秋には立ち入り検査し、場合によっては行政処分も検討する方針だ。


■信じていた人たちの怒り

郵便局の数は全国に2万4000ほどある。集中局は別として、大小さまざまな郵便局はそれぞれの地域に密接に入り込んでいる。大切な拠点とも言える。そしてそこで働くスタッフは、当然のように地域の人たちと顔なじみになる。お互い顔が見える関係となり信頼が生まれる。そんな郵便局を舞台に、今回のかんぽ生命保険の不正販売問題が起きた。報じられる不適切なケースからは「私たちの郵便局」を信じた人たちの怒りと溜め息が聞こえてくる。


■郵政民営化の“今”は?

「2007年の郵政民営化以降で最大の不祥事」と言われる今回の事態。小泉政権での郵政改革で「郵便会社」「郵便局会社」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」という4つの会社に分社、銀行とかんぽ生命は日本郵政の株式をすべて売却し、いったん完全に切り離されたはずだった。
しかし現在は再び日本郵政の65%出資子会社になった。日本郵政には国が半分以上の出資をしているため、民営化は“完全”とはなっていない。その体制に「ノルマ」という要素が加わった。かんぽ生命保険の手数料は、郵便の赤字運営に苦しむグループにとっては「命綱」である。保険を扱う各郵便局にも、そして郵便局員にも命綱を維持するための「ノルマ」が課せられた。


■ノルマ廃止と新しいノルマ

記者会見では「2019年度のノルマ廃止。翌年以降は抜本的な見直し」と発表があった。日本郵政グループとしてもそれが深刻な要因と認めた結果であろう。今後は3000件の契約者について、不利益があったかどうかの確認作業を行うという。その作業を担う中心は郵便局スタッフであり、今度は契約の確認作業という新たな辛い「ノルマ」を背負うことになる。生命保険は私たちにとって人生設計の大切な柱のひとつである。何よりもまず、不利益を受けた人たちの迅速な救済を望みたい。(2019.08.01)


【東西南北論説風(117) by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

画像:『写真AC』

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