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<論説コラム>アメフトにボクシングに・・・土俵際のスポーツ界コンプライアンスその深層

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<論説コラム>アメフトにボクシングに・・・土俵際のスポーツ界コンプライアンスその深層
悪質タックル問題を起こした日本大学アメリカンフットボール部の公式戦出場停止処分が解除されず継続されることに決まった。

日本大学と関西学院大学の2018年5月6日に行なわれた定期戦で起きたショッキングな出来事。ボールを持っていない関学大のクオーターバック選手に日大の選手が危険なタックルをしてケガをさせた事態は、スポーツ界に留まらず大きな社会問題になった。
関東学生アメリカンフットボール連盟は日大チームを今年度公式戦での「出場資格停止」処分とした。その一方で、反省文や再発防止策の提出そして抜本的改革などによって処分を解除するという救済への道も残していた。

7月30日になって日大の第三者委員会が最終報告書を発表した。「理事長が適切な危機対応を行なわず社会からの批判を増幅させた」と断じ、これを受けた大学側は、前監督と前コーチを懲戒解雇、理事長らの報酬自主返納などの処分を決めた。この流れの“タッチダウン”は「出場停止処分の解除」のはずだったのだが・・・。
翌日、連盟は処分を解除しないと発表した。連盟幹部の言葉の端々から、日大理事長が「記者会見はしない」意向を大学内部に示したことへの失望とそれを含めた大学あげての改革熱不足が大きな要因との空気がうかがえた。
3日後になって日大ホームページには理事長名の長い謝罪文が掲載されたが処分はくつがえられない。

「スポーツ界のコンプライアンス強化事業におけるコンプライアンスに関する現況評価」という少し長いタイトルの報告書を読んだ。
2018年に入って、カヌー選手によるライバル選手への薬物投与、そして女子レスリング界のパワハラ騒動、そんな渦中の3月31日にスポーツ庁から発表されたもので、1年前に発足した一般社団法人「スポーツ・コンプライアンス教育振興機構」がまとめた。
スポーツ選手や団体の事件や不祥事が目立つ中、現在の状況を把握した上で再発防止のために動き出そうという目的の報告書である。10のスポーツ団体にヒアリングを実施し、強化事業の目的、背景、不祥事の分析、事案発生時の対応、そして提言などで構成されているが、これが随所にユニークな記述が見られるなかなかの名文なのである。インターネットで閲覧できる。


■不祥事の報告だけではなく「フェアプレイ精神」の報告も!

例えば、不祥事の分類をしてみたところ「体罰」「賭博」「窃盗」「パワハラ・セクハラ」「スコア改ざん」など14項目にも上ったとして、「スポーツ界はいったいどのような世界なのかと思わざるを得ないほど数多く発生しており、現代社会の縮図的様相を呈している」と切れ味鋭く斬っている。
報告書の中で特に目を奪われたのは「フェアプレイ精神」「スポーツマンシップとは」の文章だった。
平昌五輪のスピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒選手が、自分への歓声が次のレースの邪魔にならないよう指を口に当てて要請したことや、ライバルの銀メダル選手とお互いを讃え合ったことなどを紹介し「これぞフェアプレイ精神、スポーツマンシップの発露と言うべき美しい情景」と評価した。
それに続く下りは『平家物語』の時代に飛び、源氏方の那須与一が屋島合戦の最中、波に揺れる船上の扇を射落とした時に味方の源氏側だけでなく敵方の平氏側からも歓声が起きたこと、またアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領が趣味である熊狩りに行ったものの獲物を取ることができなかった時に、同行ハンターが年老いた雌熊を仕留めるように話したところ「スポーツマン精神にもとる」と拒否したこと、それが「テディベア」の名前の由来になったこと、そんな数々のエピソードを紹介した上で、こうした事例を各スポーツ現場で「教育素材」として伝えることを提言している。
しかし、調査対象期間である2014年4月から2018年3月までの4年間で、違反事例は18競技種目にまで及んでいたという総括はやはり深刻だ。

2020年の東京五輪まで2年を切った。スポーツ庁が「コンプライアンス(法令順守)」の名の下に対策を急ぐのも五輪開催地のイメージを損ねてはいけないからである。
しかし、本来、スポーツにはコンプライアンス云々と言う以前に「ルール」があり、それを守るという大前提があってこそ、数々の競技が成り立っている。
一生懸命アイデアを駆使して書かれた報告書も実効が伴わなければただの文章。実は日大アメフト部の悪質タックル問題はこの報告書の発表から1か月後に起きている。まずは身内である多くのスポーツ関係者に読んでもらい、そこに込められた“心”を共有してほしい。

日大アメフト部はまもなく開幕する関東学生リーグ戦に出場できず、初めて下位リーグに降格することになった。そして4年生部員にとっては大学最後のシーズンが終わった。あまりに早すぎた真夏の試合終了ホイッスルだった。
日本ボクシング連盟の内部騒動が連日メディアをにぎわせる中、バドミントンの世界では、違法賭博問題で出場停止処分を受けた桃田賢斗選手が復帰後の世界選手権で日本男子初の金メダルに輝いた。新監督を迎えた日大アメフト部も次のシーズンで再起を賭けてほしい。そのチーム名は「フェニックス(不死鳥)」なのだから。


画像:pixabay
【東西南北論説風(56)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】(10日20:08)

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