人は食を求めます。山の恵みを頂戴し、海の幸も平らげて。そしてお伴するのがお米さん。お米は太古より人々の生を紡いできました。そんなお米の豊凶こそ一大事。志摩の人々は、平安時代より田植えの神事を行い、豊作を祈り続けてきました。古式ゆかしい時代絵巻を今に見る「磯部の御神田(おみた)」。子供たちの奏でる笛や太鼓、ささらの音が御料田(ごりょうでん)を渡る中、白装束に赤いたすきの早乙女たちが苗を植えてゆきます。
地元の人から「いぞうぐうさん」と親しまれる伊雑宮。背後の山々には美しい棚田が広がります。そして、志摩はまた海の里。海人も「御神田」に豊漁安全を祈願します。山と海が織りなす大自然に、伊勢の神様。その地に実る「お米さま」。人々が助け合い、実りを祈り、平安浪漫を楽しむ祭り。それが「磯部の御神田」なのです。

出演

吉村作治

吉村作治

早稲田大学名誉教授