一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>知らない所、スマホなし、徒歩…昼と夜1時間で店に入れないと食事がバナナになる旅がある

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<コラム>知らない所、スマホなし、徒歩…昼と夜1時間で店に入れないと食事がバナナになる旅がある
 山ほど愚痴をこぼしていたその人を、仮に山口さんとお呼びする。

 有名企業にお勤めの山口さんとは、私が社会人になりたてのころに知り合い、よく連れ立って異性の相手を中心とした異業種交流会に参加していた。

 会の直前には彼と予め待ち合わせ、当日の交流会を意義深いものとするため、作戦会議をするのが常だった。

 しかし、そのうちの前半は、年下である私が山口さんの愚痴を拝聴する時間。会社の料簡の狭さや同僚の酷さなど、企業イメージとはだいぶ異なる内容を伺うたびに、事の真偽はさておき、世間には知られていない闇があるのかもと驚いたものだ。

 当初は聞き役だった私も年次を重ねると、ご多分に漏れず次第に愚痴るように。山口さんとの作戦会議は前後半を互いのデトックスの場として使い切り、それはそれでその後の交流会が捗るのであった。

人は新しい環境に慣れ、結果を出して自分に自信を持ち始めると、周囲の事に関して愚痴りがちとなる気がする。

 毎週水曜日の深夜に名古屋のCBCテレビで放送されている『本能Z』。14日までの、このところの放送を見ていても、そんな場面が多い。

 現在同番組では、視聴者の依頼で、名古屋から福井県の鯖江市まで往復280キロを歩き、現地にある“マンゴーの王様プリン”をゲットして持って帰ってくるというコーナー「辛ゾンドットコム」の第3弾が進行中。名古屋吉本のお笑いコンビ、トラッシュスターの中山真希さんがその過酷なロケに挑んでいる。

 第1弾では三重県津市の「ブラックカレー」を、第2弾では静岡県浜松市の「すっぽんスープカレー」をそれぞれCBCテレビまで持ち帰るべく奮闘。

 ツラさに耐えてロケにひたむきに取り組み、街で出会った方々にも礼儀正しくされているお姿の好感度からか、放送回が進むごとに、ロケ中に「見てるよ」とか「頑張って!」などと彼を応援する視聴者の方の様子が増えてきた。

 そうして迎えた第3弾。

 同コーナーでの手応えを感じつつあるに違いない中山さんは、道中でのキャラが別人の如く急変した。

「ご飯は、食べるお店を1時間以内に見つけられなければバナナにする」などと自らに厳しい試練を課す、今田耕司さんや東野幸治さんらスタジオ出演者に対する愚痴をこぼし始めたのである。

 言いたいものであって、聞きたいものではないのが愚痴。

 そのため、中山さんの好感度はきっと上げ止まったのだが、この変化のおかげで、肝心の彼の出演コーナー「辛ゾンドットコム」は、見どころの厚みが相当増した。


■中山、人気出てきて調子乗ってるんちゃう?

ご覧になっていない方向けに説明すると、このコーナーは番組の中で、中山さんがひたすら目的地へ歩いているロケの映像を、スタジオの今田さんや東野さんがいわゆる“ウオッチ”をしながら進んでいく。つまり、私たち視聴者は放送でその両方を同時に見ている形だ。

 これまで、スタジオ出演者の皆さんは、基本的には中山さんを応援しながらウオッチする、視聴者側とほぼ同じ立ち位置だった。これは人として“模範的行動”をとりがちだったVTR中の中山さんに、ツッコミどころが少なかったからだとみられる。

 しかし、中山さんが愚痴り始めたことでスタジオの空気も一変。「中山、人気出てきて調子乗ってるんちゃう?」「道中で困ったら我々の悪口言うの、止めてもらえます?」などと、皆さん返す刀で彼にダメ出しを始めたのだ。

 こうなったことで視聴者は、中山さんの隙が増えたロケの様子と、スタジオの皆さんの冴えたツッコミを複層的に楽しめるようになったのである。

 さらに言えば、ロケ先とスタジオで間接的に互いの文句を言い合ってきた、若手と大先輩が、第3弾最終回で果たすであろうスタジオ共演でどんな荒れ模様を見せてくれるのかについても、気になってくる。

 ちなみに、中山さんが番組上最も多く不満を漏らしているのは、東野さんが決めた上述の「ご飯がバナナになる」ルールについて。道中で出会う人や視聴者に対し、東野さんの酷さを訴え続けている。

 例え制限時間内に営業中の飲食店を見つけても、ロケの許可が出なければダメ。このため14日の放送では、疲労と空腹に耐えかねた中山さんは何としてもロケを成立させようと、店に入るなり店員さんに対して次のように交渉を始めた。

「今田耕司、東野幸治がやってる番組でロケをしてるんですけど…」

 そういえば、冒頭に紹介した、私の知人で会社について山ほど愚痴る山口さんも同じ。

 男女がちょうど同じ数ずついる異業種交流会では、自己紹介の一言目からお勤めの有名企業の名を全力で活用していた。

 愚痴とは、愛情の発露でもあるのだ。


平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)

画像:トラッシュスターの中山真希さん(C)CBCテレビ(20日19:49)

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