一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>“スーパーボランティア”見たさの騒動で気付く…テレビの『歩きロケ』で映らない危機管理

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<コラム>“スーパーボランティア”見たさの騒動で気付く…テレビの『歩きロケ』で映らない危機管理
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

「“スーパーボランティア”尾畠春夫さんが涙の断念」。先日、そんな報に接した。

 彼が泣く泣く諦めることになったというのが、講演で訪れた東京から、自宅のある大分まで1100キロを歩いて帰るという旅である。

 尾畠さんと言えば、数多くの被災地にボランティアとして出向いて活動。2018年には山口県内で行方不明となり、警察・消防が大勢で捜索しても見つからなかった男の子をわずか20分で発見し、人口に膾炙した。

 断念の理由と言うのが、報じられたインタビューによれば「自分が歩いていると、地元の方や通行人が集まったり、路上ではハザードをつけた車で交通渋滞が起きたりしていて、いつ事故が起きてもおかしくないと思った」から。

 ご本人としてはただ、偶然出会う人々との一期一会の出会いを楽しみながらゆっくりと帰りたかったのだと察せられる。だが、注目の人であるがゆえに、地元の方々だけにとどまらず、取材陣も殺到し、人の集まり方に拍車がかかってしまったのだ。

 自分の思いよりも、“人の道”が最優先。安全を第一に考えた引き際にも、お人柄が表れていたようだった。

尾畠さんと比べると距離は短いが、それでもかなりの長さの旅を続けているお笑い芸人さんがいる。

 名古屋よしもとに所属するトラッシュスター・中山さん。彼は名古屋のCBCテレビの深夜番組『本能Z』の企画「辛ゾンドットコム」で、名古屋=福井間往復280キロの踏破に挑戦している。

 放送されている旅の様子を見ていると、福井や滋賀といった名古屋の遠方ではそうでもないが、CBCテレビの放送エリアである愛知や岐阜を歩いている時は、すでに第3弾とあって、もはや人気者だと言っていいレベル。

 たまたま通りかかったり、知り合いから聞きつけて後を追ってきたりした視聴者の方から声を掛けられる様子が、当たり前のように見られるようになった。

 3月6日の放送回では、わざわざ差し入れを買ってきて渡しに来る方や、自分が履いていたかなり高価な“歩きやすい靴”を中山さんのスニーカーと交換してくれる人まで見参。

 番組的には「こんなこと、あるんすか(笑)」と中山さんが戸惑うのも納得の幸運ぶりだった。

 だが、尾畠さんのニュースを先に見ていたせいか、そのやりとりの間、路肩に寄せて停められていた車が映像に映り込むたび、無性にハラハラしてしまったのも事実だ。

 珍しいモノやコト、ヒトがあったりいたりすると、誰しも見てみたくなるものだし、対象が有名であればなおさらである。

 また過酷な旅をしている人がいれば応援したくなるし、旅をする側もそうした気持ちは心の支えとなり、足を一歩前に踏み出す力にも変わるはずだ。

 しかし、一般の方の私的な活動である尾畠さんの旅と違って、中山さんのそれはテレビ局が発注した業務上の活動。見ている分には気楽だが、尾畠さんに起こってしまった残念な状況と重ね合わせてみると、公道を使ったロケ企画における現在のハードルの高さが察せられた。

「辛ゾンドットコム」でのテレビ出演以降、ジワジワと人気や知名度が上がってきていることを肌で感じているに違いない中山さん。

 毎週拝見し、彼に対する愛着がわいてきている私としても、一気にブレイクしてほしいなぁなどと大した考えも無しに願っていたが、その上昇カーブが急過ぎるのもマズそうだ。

 視聴率がうなぎ上りになる一方で、場合によっては企画終了の危機が訪れるかもしれないからである。

 テレビ番組制作者を悩ませる変数が増え続ける中、「辛ゾンドットコム」は間もなく第3弾が終了し、次へと続きそうな空気を漂わせている。

 人気が出てほしいけど、出過ぎても困る…。

 偶然第4弾のロケに街で遭遇したら、私は遠くからただそっと見守るスタイルで行こうと思う。

 仮に、今後中山さんに話しかけてくる人が減ったとしても、人気がなくなったわけでなくそういう理由の可能性もあるので、しかるべき方によるしかるべき決断の前には、そんな側面も是非考慮されたい。


平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)

画像:トラッシュスター 中山真希さん(C)CBCテレビ(11日15:50)

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