一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>リアルタイムで見ても内容がリアルタイムじゃない…テレビに必要な忖度視聴

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<コラム>リアルタイムで見ても内容がリアルタイムじゃない…テレビに必要な忖度視聴
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

「家行ってないですよ!あれタクシーのところまで送っていって、『オレ歩いて帰るから』って…」

 身振り手振りをまじえて必死に弁解する今田耕司さん。6月20日深夜、名古屋のCBCテレビが放送していたバラエティー番組『本能Z』での一幕である。

 今田さんが不平を漏らしていたのは、ご自身が週刊誌に深夜デートを激写され、掲載された記事の書きぶりについて。当時の行動を赤裸々に明かし「お持ち帰り」ではないと強調されていたのだが、どうにもすでに耳にした話や読んだ内容だらけだった。

 それもそのはず、正確を期するために調べてみたら、事案を報じたのは5月17日発売の女性セブンで、先行してネットで配信されていた記事の日付は5月16日。1か月以上前の報道なのだ。

 その後、番組・イベントに登場した今田さんご本人のコメントや、彼が会長を務めるという独身男性芸人の集い“アローン会”のナイナイ岡村さんによる情報発信、またそれらを取り上げるネットニュースなどで概要が散々報じられ、それらがすっかり沈静化した6月20日に件の放送である。当然のごとくトーク自体は面白いものの、いかんせん旬の話でなく、今頃感がにじみ出ていた。

 テレビ番組は生放送や“疑似生”スタイルを除いて、収録から放送まで通常とっても時間がかかる。

 収録したVTRをもとに、映像や字幕スーパー、CG等の“見た目”から、音声、音楽、効果音等の“聞こえ”まで、様々なアプローチで番組を作り込んでまとめる編集作業。そののち、何段階かのチェックと直しを経てから世に出るため、番組のカテゴリによって様々ではあるが、今回の『本能Z』がそうだったように放送が収録の1か月程度後というのも普通にあるのだ。

 機材の進歩で効率的に編集作業が行えるようになってきているのと同時に、凝ろうと思えばどれだけでも凝れる仕様に。また法令順守などの観点からチェックが増えることはあっても減ることはほぼなく、かかる時間の長さに現場の皆様のご苦労が察せられる。

 制作側がリアルタイムで見てほしい番組が、視聴者側のリアルタイムとはかけ離れた時間軸で展開する。そんな、テレビ番組が抱えるパラドックスの一端が今回の件から見える。

「収録と放送で時差があるのは仕方がない」という前提が、長らく当たり前のこととしてテレビ局にはあると思う。だが、時差が大して気にならなかった時代はすでに終わっていて、ネット標準装備となった世の中にあって、収録モノの番組は、扱う内容によってはスピード感やリアルタイム性に乏しいテレビの弱さがバレやすいものとなっているのだ。


■タイムラグをなくすことは構造的に不可能

 一方、最もリアルタイム性が大事な、報道・ニュースの部門に目を移すと、ネットと商売との折り合いを一早くつけた新聞や、特ダネはカネになり販促にも生かせると判断したのであろう週刊誌など、発行や発売を待たず記事を配信するようになった紙媒体がネットで先行。

 しかし、特にここ1、2年で全国各地のテレビ局もヤフーなどのポータルサイトやスマートニュースなどのニュースアプリへの記事提供を次々に始め、放送枠にとらわれず速報を配信するなど、ネットニュース上の存在感が高まってきている。

 ユーザーにとって閲覧できる記事が増えて利便性が高まるのはもちろん、それと同時に、テレビ局にとっても“視聴者候補”である彼ら彼女たちとの接触点をスマホ等で増やせることには、大きな利があるのだ。

 やや話が逸れたが、『本能Z』のような収録モノのバラエティー番組では、コンテンツと視聴者との間のタイムラグをなくすことは構造的に不可能。ただ、その時差がバレやすい今回のような出演者をめぐる芸能ニュース等については、グッとこらえて扱わないことで、視聴者との無用な距離感を作らないという選択肢もあるように思った。

 ちなみに、『本能Z』本編の中で、件の今田さんの深夜デートに関するトークパートはラストに位置していたのだが、その場面から今田さんと東野さんの衣装が変わっていた。というか、彼ら以外の出演者もそれまでの皆さんからゴッソリ入れ替わっていた。

 よく見たら次週予告に映っているのと同じ方々。後に収録したこのパートだけ先に放送することで、これでも時差が縮められていたのである。


平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)(25日10:14)

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