一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>『この記事のラストでまさかの展開に!』 テレビ番組的“引っ張り”は現代で通用するのか

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<コラム>『この記事のラストでまさかの展開に!』 テレビ番組的“引っ張り”は現代で通用するのか
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

 テレビには“引っ張り”なる陋習がある。

 番組を見ている人に少しでもそのまま見続けてもらえるよう、ちょっと先にある番組内容や次回の放送に興味を抱かせるため、煽る行為だ。

 そこそこの効果は見込めるものの、視聴者の期待値を高めてから先を明かす手法であるため、本当に凄いことがちゃんと起こるか、あるいは上手にその手法自体で視聴者を楽しませられるように使わないと、見る側からしたら“騙された感”だけが残る。

 ゆえに、番組側から言えば、短期的には得だけど、長期的には損となる可能性がある諸刃の剣。

 今はあらゆる業界で、ユーザーとの接触点という貴重な場を、いかに共感や信頼を勝ち得る機会とするかについて各担当者が血眼になっているが、未だに“騙し”ととられかねない行為がそこに存在するテレビは、それほど苦境か前時代的か、その両方かだろう。

 7月25日深夜のCBCテレビ『本能Z』で、私はまたうっかりやられてしまった。

 同番組では現在、名古屋のお笑い芸人・トラッシュスターの中山さんが、スタジオの今田耕司さんに三重県津市の老舗洋食店で人気の「ブラックカレー」を食べてもらうため、名古屋=津の往復140キロを歩いて届けるという企画が進行中。

 前週の同コーナーは「東洋軒でまさかの展開に!」というとても大きな字のスーパーがかかる中、お店の方にカレーをお願いしたっぽい中山さんが「それはもう、ご迷惑をおかけするわけにはいかないので…。それはしょうがないですよね」と残念そうにつぶやき、何らかの没交渉となったようなやりとりで締められていた。

 スタジオでVTRを見ていた出演者の皆さまも、醸されていた不穏な空気に対して、

今田さん:「完全に断られて諦めてる感じ」

東野さん:「想像では『すいません。もう3日前に止めたんです…』」

宮迫さん:「『遠くに運ぶというのはちょっと…』では?」

 と、それぞれが次週の展開を予想。私は宮迫さんを支持していた。

 それから1週間。結果はこうだった。


■番組が告げていた「まさかの展開」とは?

東洋軒の方:
「大丈夫なんですが…オープンしたところでして、これからたくさんお客様がいらっしゃるので、取材でしたら後から来て頂いてもいいですか?」

 前週、番組が告げていた「まさかの展開」は、忙しいランチタイムが終わってから夕方にもう一度来てくださいということだった。

ちなみに私がこれまでテレビ番組で目にした中で、もっともハイレベルだった“引っ張り”は、古巣・東海テレビが制作したドラマ『火の粉』の最終話にあった。

 とある一家に対して散々危害を及ぼしてきた隣人である主人公に対して、一家で企んで毒入りのスープを飲ませようとしているようにしか見えない晩餐のシーン。その直前には怪し過ぎる粉の入った小瓶が強調されていて、まさに「最後の晩餐」といった緊張感ある場面だった。

 何度かスプーンで飲みそうになってはやめるを繰り返し、これ以上ムリというほど煽った後、ついにスープを飲んだ主人公が、すぐに喉をかきむしって苦しそうに呻き始めたのだ。そこでCMへ。

 最終話の終盤、殺すか殺されるかの瀬戸際で行われたこの“引っ張り”で、チャンネルを変えた人は少数だっただろう。

 そして迎えたCM明け。主人公は苦悶の表情をしながら、こう叫んだ。

「からーーーーーーい!」

 一家の人々は(おそらく視聴者も)一斉に大笑い。家族の一人が大好きな激辛香辛料入りのスープを主人公に飲ませたらどうなるか、試したかったというのだ。

 当時このドラマでネットでの宣伝を担当していた私は、番組ハッシュタグをつけて投稿されるツイートを見ながら番組を視聴していたのだが、騙されたと怒っていらっしゃるような方は皆無で、むしろいわゆる「草不可避」の状態となり、この“引っ張り”手法は大変好意的に受け止められていた。

 例に引いた『火の粉』と、今回の『本能Z』との差は、言わずもがな「引っ張り自体がネタ=面白要素になっているかどうか」だ。言い換えれば、番組を「いかに見てもらうか」ではなく「いかに楽しんでもらうか」というベクトルで、知恵と工夫がなされているかどうかの差だろう。

 それでも今回の『本能Z』には、私が「おー!」と心揺さぶられた場面があった。

 トラッシュスター・中山さんが片道70キロ歩いて手に入れた今田さん向けの『ブラックカレー』。当企画のメインアイテムと言っていいそれが、思い切り“レトルト商品”の形で出てきたところだ。

 家で作ったカレーも「2日目」に食べるためには、特に冷蔵保存が推奨されるこの時期。当然、調理済みの状態で運ぶのではないだろうとの予測はできていた。したがって、私は同企画の初回から「必死で届けるモノが何とも味気ない見た目となってしまう無念さをどう楽しく表現するのだろう…」という期待をもって、ずっと見ていたのだった。

 が、番組では、そこをまさかのスルー。

 前週の“引っ張り”にあった「東洋軒でまさかの展開に!」。私にとって、これは嘘ではなかった。


平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)
画像:トラッシュスター 中山真希さん(C)CBCテレビ(30日12:18)

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