一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>市民は「県庁所在地で寂れてる街全国1位に…」と嘆き節 でも意外とスゴイぞ三重県津市

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<コラム>市民は「県庁所在地で寂れてる街全国1位に…」と嘆き節 でも意外とスゴイぞ三重県津市
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

「“県庁所在地で寂れてる街”全国1位になっちゃったらしいんだわ…」

 18日深夜、名古屋のCBCテレビの番組『本能Z』で、スナック経営の男性がそう呟いて肩を落とす場面が放送されていた。

 どこのどのような調査なのかは謎なのだが、とりあえず彼のお店は三重県の津市にあった。

 同番組では現在、名古屋にいるスタジオMCの今田耕司さんに津市の老舗洋食店・東洋軒の名物「ブラックカレー」を歩いて届けるというロケ企画が進行中。お笑いコンビ・トラッシュスターの中山さんが挑んでいる。

 同日の放送分では、ようやく名古屋からの片道70キロを踏破し、津に到着したところだった。

“自分が必死に歩いて目指してきた津とは一体どんな街なのか!?”

 この中山さんの熱いギモンに対する地元の方からの即答が、寂寥感しかない冒頭の一言だったため、目的地到着の高揚感からかテンション高めで聞いてしまった彼は、難しいリアクションを迫られていた。

 実は20年前、私も飲食店の方と同じようなやりとりをして、返答に窮した経験がある。新卒で入社後、最初の配属先が三重支局。社会人生活&初の一人暮らしが同時に津で始まったのだ。

 確かに当時の津もしっかり寂れていた。

 私が通っていた当時の支局が象徴的と言える。入居するビルの建て替えに伴い、支局は別の建物でのいわゆる仮住まい中。その建物というのが、閉店してしまった大型スーパーの跡地だったのだ。

 いかにも元従業員入口のようなところから入館して、閉店時のまま残されているスーパー然としたエスカレーターで上がると、がらーーんとした元売り場のフロアが眼前に広がる。その一角に不自然にある、間仕切りに囲まれたスペースが職場だった。当然、窓などない。

 そこでちょっと残業して帰ると、外ではもう飲食店が閉まり始めるし、休日も市内だと私は近くの海岸かお店で酒を飲むくらいしかすることがない。

 しかし今振り返っても、その“津時代”は実に楽しい日々であった。


■寂れてて、コレ。

『本能Z』の中で、中山さんが津市内で多くの方から親切にされたり、食べ物をもらったりしていたが、私も何と言っても人に恵まれた。

 お仕事関係からご近所さんまで、相手があることなので詳らかには書けないが、「こんな人会ったことない」というユニークな方ばかり。

 彼ら彼女たちと、閉店時間の早さに合わせて明るいうちから飲みに行けば、「こんな物食べたことがない」という旨さほとばしる料理が供される。ちなみにこれまでの生涯で私が食べた『肉』と『魚』、それぞれで最も旨かったのが、その津時代に食べた逸品である。

 しかも、それから20年が過ぎ、独立した今も、私は当時の津時代に知り合った複数の方とお仕事をご一緒させていただいている。社会人のスタートを津で切れたことは、幸運というほかなかった。

 寂れてて、コレ。

 私は実際に住み、働き、暮らした人間として、これ以上かの地に求めるものが思い当たらない。

 冒頭のスナックのマスターの発言通り、テレビには時空を越えて寂れたままである現在の津市内の様子が映し出されていた。早めに閉まる夜の街を堪能した中山さんが、一夜明け「東洋軒」を探して歩いている。そう、そこからお城の方へ歩いたらすぐだ。

 番組では「トラッシュスター・中山さんに届けてほしいモノ募集中」などと告知されていたし、きっと今回の“ブラックカレー”を届け終わった後も、彼の旅は続くのだろう。

 この場を借りて、今後について一視聴者としての望みを言えば、もっと道中で自由に動く中山さんが見てみたい。今回は特に自分のよく知る街が登場していたため、彼の不自由さが際立って見え、それによって逃してしまったであろうシーンがいくつも目に浮かんだからだ。

 見るからに好青年で人懐っこいものの、けして器用だとは言えなさそうな中山さん。だが歩いていたのは、そんな彼をしっかり受け止めてくれる懐の深い街だ。

 彼がもっと道中の皆様と“関わる”ことこそ、企画の主旨だという『人間ドラマ』が、カメラの前で生まれてくるために必要な要素なのではなかろうか。

 ただの“聞き役”や“見届け役”、“リアクション役”であれば、番組上、カメラを持って撮影をしている人だけでも出来てしまうのだから。


平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)

画像:トラッシュスター 中山真希さん(C)CBCテレビ(20日17:35)

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