一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>板尾監督の映画『火花』 その宣伝にみる高度な情報戦

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<コラム>板尾監督の映画『火花』 その宣伝にみる高度な情報戦
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

お笑いコンビ・2丁拳銃さんの、一度見たら忘れないお顔をされているほうの小堀さんが、いつの間にか芸能界の大御所感漂う女性と入れ替わっていた。

と思ったら、相方・修士さんの奥様・友紀子さんだった。先日、ついに数多の宣伝に屈する形で、初めて映画『君の名は。』を見て以来、入れ替わりと言いたくて仕方がない。

22日(水)深夜、名古屋のCBCテレビで放送されていた『本能Z』によれば、修士さん夫婦で小堀さんをいびるのが話題となっているのだそうだ。お笑いに造詣が深くない私は初耳である。

元芸人さんで、現在は番組の構成作家などをされているという友紀子さん。スタジオの今田さんや東野さん相手に引けを取らないほど、只ならぬ風格と話芸があり、確かに“2丁拳銃+友紀子さん”のトークは見てみたい。

だが、小堀さんは趣味を優先して収録を欠席とのこと。番組自ら振っておいて見せないとは何かがおかしい……。理由はトークが進むうちに判明した。

「僕は主役の菅田将暉くんの、相方役です」

と、修士さん。映画の宣伝だったのだ。

その映画とは、ピース又吉さんの芥川賞受賞作『火花』。監督は同じく吉本所属の板尾創路さんで、『本能Z』の制作協力は吉本興業。ガチガチである。

単行本が出たときには文庫化を待とうと買わず、Netflixでドラマが配信されたもののまだ見ておらず、文庫になっても買いそびれ、配信ドラマがNHKで放送された際には見忘れた『火花』。そんな私に対して、ついに第5の矢が刺さったのだった。黄忠か。

テレビ番組のゲスト出演者が宣伝目的だらけとなって久しい。

色々なパターンがあるためにまとめづらいのだが、番組側と宣伝側の思惑が何とか一致した帰結という点ではどれも同じだと思われる。

一視聴者として思うのは、リサーチ不足で知らなかった良作の出現に気付くきっかけになるので助かるなぁというところ。ただ前提として、少なくとも自分は宣伝を見るために番組を見ていないため、番組の内容が面白くて初めて宣伝に好感を持つことになる。

逆に見ていて最も震えるのは、唐突感しかないパターン。

特に私の地元・名古屋などの地方に、映画や舞台の宣伝キャンペーンとしてビッグネームの俳優さんがやって来たとき、生番組で散見されるアレだ。果たして誰が得をしているのか分からず、前述の震えの理由は寒さだったり、怒りだったりする。

だが、同じ顔ぶれのゲスト出演者の皆様が次に生出演している別の番組を見ると、貴重な機会が上手に活かされ普段の番組内容より面白くなっていることがある。その場合、たいてい宣伝対象の作品も素敵に見える。色々と残酷だ。

その点で言えば、今回の『本能Z』はガチガチなだけあり、宣伝でも面白かった。

『火花』が芸人さんをめぐるお話ということもあって、特に2丁拳銃・修士さんが語る“劇中の相方”菅田将暉さんの、ネタに対する真摯な姿勢のお話などは聞いていてほほーと思った。映画に適度なリアリティーが備わっているのが感じられ、作品を通じて伝えたいことがストレートに入ってきやすそうである。

一方で番組としては、2丁拳銃・小堀さんがスタジオに来られていて、修士さんの奥様を含めた3人トークが実現していたら、もっと面白くなったのは間違いない。

しかしその場合、番組の中での映画の露出が、時間上、インパクト上、相対的に薄まることになるので、どうしてもこう考えてしまう。

「今回は番組として、2丁拳銃よりも映画を推したい意図があり、小堀さんはあえてスタジオに呼ばれなかったのではないか……」

板尾創路監督の映画『火花』の宣伝では、ちらほらと高度な情報戦の気配が感じられる。

平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)(14日03:05)

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