一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>『昼夜、昼夜、朝昼夜キャバ』“日本一のキャバクラ客”斜め上の社長の流儀

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<コラム>『昼夜、昼夜、朝昼夜キャバ』“日本一のキャバクラ客”斜め上の社長の流儀
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

「時は金なり」という言葉の意味を、皆さんご存知だろうか。私は恥ずかしながら、42歳にもなって知らなかった。

 ある日の夕方、名古屋への引っ越し後の整理が一段落し、古巣テレビ局のローカルニュースをボーっと見ていたら、ついにそこにも登場した。

“名古屋No.1キャバ嬢”の小川えりさん。通称:エンリケさんである。

 CBCテレビの深夜バラエティー『本能Z』で、かつて夜の蝶向けセット専門サロンのロケ中に発掘された逸材の彼女。同番組の出演をきっかけに、『ミヤネ屋』や『サンジャポ』など全国ネットの名だたる番組からオファーが舞い込み、“2日で1億稼ぐキャバ嬢”として現在テレビで引っ張りだことなっている。

 この日は、勤務先の名古屋・錦のお店で時事ネタについて問われ、キャバ嬢ならではの考え方で的確にコメント。

 私が報道記者時代、こんな楽しそうな取材をしたことがなかったということはさておき、エンリケさんの“発掘主”であり、水商売や風俗ネタの取材練度が極めて高いCBCテレビは、追随してきた他局を置き去りとし、その遥か先へと歩みを進めていた。

 以前、エンリケさんに密着取材をした時に偶然出会った“日本一のキャバクラ客”を発掘し、密着ロケに成功していたのだ。その模様が30日深夜放送の『本能Z』でお披露目された。

「キャバクラに関しては、北はすすきの、南は鹿児島・天文館まで、年間300軒行きますから。夜だけでは不可能なので、昼夜、昼夜、朝昼夜。昼キャバ夜キャバ、昼キャバ夜キャバ、朝昼夜キャバっすから!」

 ネイティブの北関東訛りでそうまくし立てる、狙っても滅多に撮れないこの神がかった一節に、彼の全てが凝縮されている。

 茨城で植木のネット販売を手掛ける「相馬グリーン」の代表取締役・大内新太郎さん(39)、その人である。

 業界トップクラス、グループ年商50億円という会社を経営する大内社長。彼の密着企画は、一般的な密着VTRには存在する、会社でのお仕事やご自宅でのプライベートの様子などは一切なし。まさにひたすらキャバクラ漬けの3日間という、予想だにしない仕上がりとなっていた。

 その怒涛っぷりを表現するため、敢えて一文でいくと、密着1日目、札幌の時計台前で取材班と待ち合わせた大内社長は、その日の“おもてなし相手”の男性とともに寿司店を経て、歓楽街・すすきののキャバクラへ入店し、すすきのNo.1と認めるキャバ嬢を指名して、さらっと55万円使った後さらに飲食店をハシゴし、一夜明けた2日目の朝に札幌から仙台へ飛行機で移動すると、空港には茨城・つくばから自家用車に乗ってやってきた専属運転手が待っていて、そこからご当地きっての歓楽街・国分町にあるキャバクラへ昼から突っ込み、シャンパンを2本空けると「次行きましょう」と席を立ち、隣の店に向かうかの如き感覚で福岡へ飛んで、ご当地にいる“おもてなし相手”の男性と中洲のキャバクラに入店し、テキーラをあおるなどして54万円使ったうえ、さらに別の2軒をハシゴして夜を満喫した翌朝、密着3日目は、中洲で朝6時から営業しているキャバクラで朝シャン(朝のシャンパン)スタートを飾り、午後から名古屋へ移動して、錦のキャバクラで3時間飲み続けて62万円支払い、取材が終了。

 3日間で4都市7軒のキャバクラを巡り、使った総額は200万円超。その大盤振る舞いもさることながら、各お店での大内社長の楽しみ方が全くもって想像の斜め上だった。

 キャバクラというと、お金を使える男性諸氏が、その道のプロの女性を相手にトークを楽しみつつ、あわよくば的な気持ちも見え隠れする絶妙なバランスの社交空間というのが自分のイメージだったが、大内社長の場合は、後者の“下心”が全く見えないのである。

「同伴出勤は女の子にお金がつくんですけど、アフターはただのサービスっすからね。『アフター来てよ』なんて言ったら、そいつすげー嫌なヤツじゃないすか(笑)。女の子の数字にならないことはしない方がいいっすね」

 そんな大内社長は、エンリケさんいわく「No.1の子しか指名しない」とのこと。彼がキャバクラを巡って大枚をはたく理由は、夜の商売を極めた女性との時間の共有で彼女たちから学べることや、お世話になっている男性と一緒に楽しい時間を過ごすことへの対価として“割が合う”と考えているからなのだ。

 ただやはり、行く先々のお店でキャバ嬢の皆さんが、そんな立ち振る舞いをする大内社長について「日本一の客」「神様」と評していたことからも窺えるように、彼のような客はごくごく少数派だとみられる。

 さて、今回の密着VTRの中で私が最も印象深かったのは、指名嬢の条件として『昼職をせずに夜の仕事一本でやっていること』を挙げた時に、大内社長が漏らした次の言葉だった。

「僕めちゃくちゃな金使いますから、そこは本気でやっている人の方がいいわけですよね(笑)」

 彼にとっては、価値あるトキやコトには惜しみなくお金を使うということがまずあって、その対象とするならば自分が推したいと思えるキャバ嬢がいい、という順番なのである。

「金なんて稼げばいいんだもん」とニコニコ話す大内社長。

 新卒採用でサラリーマンとなり、決まった収入の中でどうやりくりするかという考え方のクセがついている私にとって、大内社長の“支出も収入も青天井”の発想は、正直理解できない部分が多い。

 しかし極零細とはいえ、一事業者となった今だからこそ、私にも分かることがあった。

 自分の可処分時間のうち、稼ぎたいなら仕事の割合を増やせばよいし、逆に特段お金が必要ないと思えば、勤労と納税の義務が果たせる程度に抑え、他のしたいことをする。都度都度、様々な欲求や状況に応じて、時間の使い方を自分が判断すればよいという価値基準だ。

 この思考がさらに進んでいくと、大内社長のように、どれだけお金がかかろうが好きなことをするという時間の使い方に価値を見出すようになるのだろうか。見えない未来には色々な意味で震える。

 いずれにせよ、幼い頃に学んで知っているはずだった、冒頭に書いた僅か5文字の言葉の意味を、私がまだ理解できていなかったということだけは確実だった。


平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)(31日20:31)

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