一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>『地名しりとり』『ごはんリレー』…CBC深夜番組のロケ新企画に付きまとう名作の幻影

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<コラム>『地名しりとり』『ごはんリレー』…CBC深夜番組のロケ新企画に付きまとう名作の幻影
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

 信号の点滅と言えば「チカチカ」でなく「パカパカ」、学校の下駄箱周辺や渡り廊下に敷いてあるのは「すのこ」でなく「ざら板」である。

 そんな小学校から大学まで名古屋市立な42歳の私にとって、地元・CBCテレビの深夜番組『本能Z』で4日の放送から新たな“ロケ企画”が始まったのは、とてつもなくうれしいことだった。

 去年の夏、同番組の感想を書いてほしいとCBCから発注を受け、当コラムの執筆を始めたばかりのころ、番組責任者の方から「現場としては気を遣わなくていいですし、提灯記事(※宣伝記事のこと)と思われるのは番組にとっても本意ではないので、どんどん厳しく書いてください」というお言葉をいただいた。

 ただ、ずっと待っていたモノが始まった喜びを表せないことは、自分にとって本意ではないので、正直に書いた。

 私が一人で盛り上がっていた理由は、『本能Z』の前身番組『ノブナガ』が、かつて「地名しりとり」などの魅力的なロケ企画を放送していたからだ。

 その「地名しりとり」は2000年代初頭、若かりし頃のペナルティ・ワッキーさんが、現在地の通行人に声を掛け、いる場所の最後の文字から始まる地名を答えてもらった上で、その場所まで実際に行き、そこで再び同じルールでしりとり。その過程で愛知・岐阜・三重の地名がそれぞれ1か所ずつ出たらゴールとなるという企画だ。

 すぐに終わるのかと思いきや、三重県の地名だけがどういうわけか全く出ず、ワッキーさんは3年以上この企画を続ける羽目になり、想像を超える旅の過酷さや、行く先々で出会う地元の方々とのハートフルなふれあいなど、実に見ごたえのある名物企画となった。

 その後も、街の人に声をかけて前日に食べたモノを聞き、それと同じモノを同じ場所で食べることを繰り返して名古屋名物の3品を食べることができればゴールとなる、マジシャン・小泉エリさんの「ごはんリレー」など、深夜にテレビのチャンネルを変えている時、「…!まだこのロケ企画続いてたのか」と思わず手が止まるような名作が生まれた。

 その後なんやかんやあったのか、こうしたロケ企画は消滅。後継番組の『本能Z』でいよいよ新たに始まることになったのだ、と当時のテイストを彷彿とさせる事前の宣伝からは感じられた。


■名作シリーズを彷彿とさせる新たなロケ企画とは?

新企画のタイトルとそのルールだが、東野幸治さんがスタジオでの説明用に使っていたフリップの記載事項を、以下まんま引用する。

【企画説明フリップ】
「“本能 ザ VTR”今回の企画は…『カラゾン・ドット・コム』。

欲しい物が何でも1クリックで届く時代…。便利な世の中になったが文明の利器は本来そこにあったはずの人間ドラマを消してしまっているのでは?

そこで文明の利器に頼らず歩いて物を届けることでどんな人間ドラマが起こるのかを見届けようという企画。

ポイントは、歩いて届けることで「物が届くありがたみを再認識」し、そしてCBCと名駅の往復だけのMC陣に「東海地方のおいしい物を食べてもらいたい」。

甘い道ではなく辛い道を選ぶ『カラゾン・ドット・コム』。現代の流通システムに一石を投じる社会派企画です!」

 以上、もっともらしいけど、結局何だかよく分からないという独特の書きぶり。これは、テレビ局においてその番組を制作するかどうか判断する際の資料となる『番組企画書』で、表紙の次のページか、さらにその次あたりに見られがちな表現である。

 まとめると今回の企画は、内容を知らされていなかった今田耕司さんが食べたいと選んだ「三重県津市・東洋軒の1ヵ月煮込んだブラックカレー」を、名古屋吉本所属のお笑い芸人・トラッシュスターの中山真希さんが、CBCから現地まで6日以内に往復140キロを歩いて取りに行くというもの。

 文明の利器を使わないというルールがあり、電車や車などはもちろん、スマホや地図も使用禁止。聞き込みだけで目的地へいくのだそうだ。

 細かい決まり事としては、正午と午後6時に、中山さんの万歩計に表示されている、時間内に歩いた歩数の10分の1の金額が、番組スタッフから彼に現金で配達料として渡される。なお、そこにはご飯代が含まれているということだった。

 そうした目的とルールで始まった『カラゾン・ドット・コム』。第1回で言うのもなんなのだが、コレジャナイ感がすごかった。

 放送上、今回中山さんがやったことは、CBC前を出発して名古屋駅まで歩き、数人に聞いて分かった三重の方角へ進んで、お昼時に愛知県大治町まで約1万4000歩で到達。スタッフから渡された約1400円を使っておいしそうなご飯を食べて店員さんに道順を聞き、途中にあった芝生製造会社で社長から扱っている芝生の素晴らしさを伝えられ、また歩く。その後、道を教えてくれた電気屋経営のお父さんからお茶とお菓子をもらって、5時半過ぎに三重県に入ったところまで。

 計21キロの移動、スタジオ展開込みで16分間だった新企画の初回は、例えるならゲームでたまにある、『ストーリーが一本道のRPG』。誰かがやっているそのゲームの様子を、テレビでただ見せられているという具合だった。

 目的も手段もゴールの期限も最初から決まっていて、肝心の行程すら想像できる範囲で進行するため、主な不確定要素が「人との出会い」のみ。


■「地名しりとり」のような人気企画になるには?

 NHK『鶴瓶の家族に乾杯』で見られる笑福亭鶴瓶さんのような手練れの技を、レギュラー番組0本だという中山さんに求めるのは酷だとしても、そうした中山さんだからこそできる“不慣れな感じ”も面白みにつなげられておらず、なかなか辛い。奇しくも同じ漢字なのだが、見るのが「ツラゾン・ドット・コム」である。

『本能Z』は、『ノブナガ』の“後継”とは言え、別番組。さらに、当時できていた演出や構成、情報管理等が今は不可能になってしまったという事情もあろう。

 それゆえ、「地名しりとり」や「ごはんリレー」といった名企画と比べて見るのは正しい視聴スタイルでないのは分かっている。しかし、宣伝から本編までテイストが中途半端にそれらに寄せられているように見えるため、このままではずっと“過去の名作との差”が不必要に気になってしまうのではないかと危惧している。

 実はまだ明かされていないルールが忍ばせてあるなど、今後は異なる意味で期待を裏切る展開となってくれることを願ってやまない。


画像:トラッシュスター 中山真希さん(C)CBCテレビ

平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)(10日14:41)

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