一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>ANZEN漫才イチ押し“最強漫才師”アモーン 最強過ぎて笑いで桜が散る

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<コラム>ANZEN漫才イチ押し“最強漫才師”アモーン 最強過ぎて笑いで桜が散る
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

 まだ2018年もうちの近くの桜が満開になったところだが、ここまで声を出して笑ったのは今年初だった。

 28日深夜に名古屋のCBCテレビで放送されていた『本能Z』。同番組の出演をきっかけにブレイクした、みやぞんさんとあらぽんさんのコンビ・ANZEN漫才がイチ押しだと勧める先輩として、“最強漫才師”を名乗るお笑いコンビ・アモーンさんが出演していたのだ。

 初見にもかかわらず大笑いできたのは、もちろん彼らが最強の漫才師だからである。あと、もう一つ理由があった。

 私事ではあるが、実は1月中旬からこの2か月ちょっと、当コラムは名古屋市内にある急性期病院の集中治療室などで執筆していた。もちろん看護師さんにタブレットPCを使う許可を得て、である

 母が、くも膜下出血で倒れたのだ。

 40歳も過ぎると、周囲の方からご家族やお知り合いが罹患された経験談を複数耳にしていて、その病気の危うさはある程度知っていた。姉から第一報を受けた時は「そうかー」というほかなかった。

 母は夜、入浴中に強烈な頭痛に襲われたという。度合いの異常さから、ふらふらしながらも自ら救急車を呼び、脳外科のある病院に搬送されたのだった。

 翌日行われた緊急の開頭手術は、7時間半に及んだ。

 術後、ストレッチャーでガラガラと運ばれてくる母からは、そのまま繭になってしまうのではないかと思うほど、幾本もの管が伸びていて、何の機能を持つのか見当もつかない機械や点滴につながっていた。

 医療ドラマでよく見る光景ではあったが、死んじゃってる場合はもっと見た目があっさりしていたり、顔に布っぽいものがかぶさっていたりするような気がしたので「あー、生きたか」と思った。

 母は麻酔から覚めていたようで、その状態のままこちらに手を振っていた。大事そうな管がそれに合わせて揺れていて非常に危なっかしい。

 そこから私は病院と家を行ったり来たりする生活。

 母は、早く退院してうちの近くの桜を見に行きたいと、まさにうわ言のように繰り返していたが、それが実現するかどうかは誰にも分からなかった。

 主治医いわく脳内の出血がかなりの量だったそうだ。

 さらに、こうした術後の数週間は「攣縮期」と呼ばれる、何度聞いても理由がよく分からないが、とにかく命に関わる危ない期間。急変に備え、姉と交代制で病院またはその近くの実家に張り付く必要があった。

 そんな生活をする中で、生まれて初めて“笑いの力”を痛切に感じた。

 ただ番組を見て何か書く、という現在のお仕事があるため、普段テレビはさほど見ないものの、必ずその対象番組であるバラエティー『本能Z』は見ていた。

 自分の病気やケガでないとはいえ、独特の雰囲気を持つ病院に通い詰めるのは、特に精神的な面で削られる。

 しかし、番組がある水曜の深夜、回によって正直差はあるものの、笑い終わった放送後には、幾分疲労が解消されていたのが自覚できた。「明日も病院行くかー」という具合である。

 大きなスポーツの大会などで、選手が意識的に笑顔を作ることでリラックスしやすくなるという話をよく聞く。だが、母がいつ死んでもおかしくないという状況で、ただの人である私がそれを実践するのは敷居が高い。

 そんな折でも、ただテレビをつけて見ているだけで笑えるバラエティー番組というものは、大変ありがたい存在だった。

 うちの近くの桜は去年より1週間くらい早く、今週見ごろを迎えた。

 想定外の早さから、地元の役所や商工会が音頭をとる「桜まつり」は始まっておらず、花見客も増えてきたとはいえ、まだまばらと言っていい。

 開花以降雨が一日も降っていないので、私は毎日花見をしているのだが、夕方から桜並木を歩き始めたその日は、満開直前のわりに、特に人出が少なかった。

 見える範囲では、私の10メートルくらい前を、おばさんとおばあさんの中間くらいの女性が一人、薄手の上下にニット帽の姿でスタスタと歩いているだけ。たまに立ち止まっては「すごーい、きれーい」などと独り言をいい、またスタスタと歩いていく。

 雪が降り出しそうな夜に救急搬送されてから2か月余り。頭を開けた影響でまだ美容院に行けない以外、何不自由なく先週末に退院した母は、運動不足の私よりよっぽど歩くのが早かった。

 28日深夜、安普請の自宅アパートで見た『本能Z』。“最強漫才師”アモーンさんのネタを拝見して、窓の向こうで満開となっている桜を散らすくらい、盛大に笑った。



平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)(14日03:05)

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