一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>あわや自宅のゲーム機から出火…プロゲーマーという職業選択への敬意

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<コラム>あわや自宅のゲーム機から出火…プロゲーマーという職業選択への敬意
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

1月も半ばに差し掛かったころ、我が家の据え置き型ゲーム機がついに咆哮を上げた。

「カラカラカラカラ」と「ブォォォオオーン」を足して2で割ったような音。そのボリュームは、すぐ上空でヘリコプターがホバリングしてるレベルである。

とりあえず無視してゲームを続けたが、程なくしてプンと香ってくる焦げ臭いにおい。まさか……と思い、元をたどるとやっぱりゲーム機からだった。本体はかなりの熱を帯びていて明らかに危ない。おい、ネコよどけ、ゲーム機で暖をとるんじゃない。

何とか赤いものを見る前に、電源を落とすことに成功。Yahoo!ニュースで“プレー中のゲーム機から出火 ボスとの戦闘中に異臭 プレイヤー無事もキャラ死亡”などと報じられる事態は免れた。

冒頭で「ついに」と書いたのは、うちのゲーム機は1日18時間くらい電源が入りっぱなしだからだ。

だいたいのことが自宅で出来る私の仕事と、オンラインゲームの親和性は極めて高い。もちろん当コラムを書いている今も、自キャラがゲーム内でアイテムを自動製作中である。

1976年生まれの私は、1983年に発売されたファミコン世代のど真ん中。子供の頃から暇さえあればテレビゲームに興じていて、「将来、ずっとゲームをやって暮らしたい」という野望を持っていた。

“時の人”高橋名人と毛利名人に憧れ、東京・青山にあったこどもの城で行われた、両者による世紀のゲーム対決を描いたドキュメンタリー映画を、親にせがんで見に連れて行ってもらった記憶が今も鮮明にある。帰りにスイカを買って帰ったが、私の連射では割れなかった。

ほぼそのまま大人になり、当時まさか実現するとは思ってもいなかった野望通りの暮らしをする中、17日深夜に名古屋のCBCテレビで放送された『本能Z』では、これまた30年前には考えられなかった職業・プロゲーマーを目指す学生が通う専門学校が特集されていた。

彼らが目指すフィールドは“eスポーツ”。コンピュータゲームを競技としてとらえた“エレクトロニック・スポーツ”の略であり、2022年に中国・杭州で開催されるアジア大会のメダル種目にもなっている。

要はゲームの大会等で順位を競ったり、娯楽として観戦者を楽しませたりすることで、プロとして稼ぐという新しい職業である。

番組では、東京都内にあるその専門学校に、お笑いコンビ・シソンヌの長谷川さんが潜入していた。

長谷川さんと言えば、以前日本で指折りのYouTuberの自宅兼仕事場をリポートした際、徹頭徹尾「このシロウトが」的なスタンスを崩さず、無礼キャラとして肉付けされていたが、演出方針の変更があったのか、今回は無礼とフォローがセットで大分まろやかになっている。

学校はプロゲーマーを講師に迎え、実際のゲーム実習から、人とゲームで対戦する際に重要となる心理学的な授業まで、様々な専門教育を学生に施していた。

ゲームというと“遊び”のイメージが強いが、“スポーツ”としてとらえればF1のようなモータースポーツの性格もあり、またゲーマーはプレイヤーでもあるので、楽器の演奏や舞台でのお芝居に近い面もありそうである。確かに、仕事だ。

「勝つことを中心に対戦していかなければいけないので、そこがやっぱり辛いですね……」

ある男子学生は、マイクを向ける長谷川さんに対して、そう日々の苦悩を吐露していた。

番組で見る限り、現在プロゲーマーを目指している皆さんは、もともとゲームが好きでそれを仕事として生きていきたいと思い立った方が多そうだった。

「好きなことを仕事にする」

「仕事を楽しむ」

こう言うと聞こえがよく、転職サイト等のコピーのようでもある。しかし、インタビューに答えていた学生からは、そんな安っぽい甘さは感じられなかった。

むしろ、これまではただ楽しんでいればよかったことを仕事にすると決めたからこそ味わっているのであろう、逃げ場のない辛さをにじませていた。きっと彼らは今、かけがえのない経験を積んでいる。

仕事は楽しいものではなく、楽しむものでもない。

私は常々そう考えていて、実際、過去に仕事で楽しかったことはただの1度もない。結果を出すことに必死で、楽しんでいる余裕など全くないのだ。

ちなみに、うれしかったことなら山ほどある。しかし楽しさとうれしさは全く別物である。

自分の場合、仕事とは別に、好きなゲームをハードが壊れるほどやり込むことで、ようやく辛さと楽しさのバランスがとれる精神構造のため、好きが高じて仕事となっている職業の皆さんに対しては尊敬の念のみだ。

私の古巣のテレビ局は、先日プロゲーミングチームとの協業を発表していた。一人のゲームファンとして、業界の市場や、すそ野の拡大を願っている。

平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)(14日03:05)

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