一五一会

名古屋のライバル局出身の平岡敏治氏(現ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)が、CBCの制作番組を見て思ったことを自由に書き、約20年前の採用試験において彼を書類選考で落としたCBCに対して、ある種の御礼をするコラムである。

<コラム>「名古屋吉本芸人」のお笑い界での立ち位置が名古屋そのものだった

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<コラム>「名古屋吉本芸人」のお笑い界での立ち位置が名古屋そのものだった
【コラム:ナゴヤ東新町 一五一会】

我が街・名古屋は自虐ネタがよくハマる。

周辺を含め地元が生んだスーパースターと言えば、ずっと信長・秀吉・家康の“三英傑”であり、ここ400年くらい変わっていない。それに次ぐのは恐らくイチロー選手である。

名古屋市による全国主要8都市アンケートでは、その中で最も魅力に乏しい街とされたのが名古屋。さらにじんわり来るのが、そのことを多くの名古屋市民が自認し、今の名古屋でいいと思いながら住んでいるという結果だ。

この独特の風土が“お笑い最大手”といえる、あの吉本をも呑み込んでいることが新たに分かった。

「“名古屋吉本”って言うと、お客さんの残念感がすごいんですよ……」

31日深夜、名古屋・CBCテレビで放送の『本能Z』に出演していた、同事務所所属のお笑いコンビ・トラッシュスターの中山さんが披露した、名古屋芸人あるあるの一つである。

営業先で司会の方が、吉本芸人が登場すると言うと会場が盛り上がるのに、名古屋吉本から来たことを明かすと、一気に下がるのだという。「名古屋にも吉本あったの?」というザワザワした空気の中では、ウケるネタもウケづらいに違いない。

番組は『俺達に光を!名古屋よしもと芸人スペシャル』と銘打ち、わざわざ開催されたオーディションで勝ち上がった精鋭3組が出演していた。あとの2組はオレンジさんと、アンダーポイントさんなのだが、私が知っているのは前職の関係でオレンジさんのみ。ピンとこない名古屋エリアの皆様は“オレンジ 東海テレビ 通販”で画像検索推奨である。

さて、テレビにプロとして出たいという方にとっては、東京・大阪と比べ名古屋は圧倒的にチャンスが少ない。単純に放送局が少ないうえ、地元制作の番組数も限られているからだ。

さらに名古屋の地上波テレビ局の志向では、その数少ない地元制作の番組で、いかにして東京でご活躍の方の出演を取り付けるかが重視されがち。ローカル局として地元の芸人さんを起用し、彼らとともに番組や名古屋を盛り上げていこうという余裕は昨今ないと思われる。

そのため、名古屋吉本芸人さんの“つかみ”はどうしても「誰も自分たちのこと知らない」という自虐ネタになりがちであり、哀しいかなウケるのだという。

「笑いが起きるかわりに、何かを失って帰っていくみたいな……」

そう肩を落としていたのは、アンダーポイント・本美さん。売れてないことがウケる前提となっているネタで笑いがとれても、売れたら使えないし、そもそも売れるためのネタではない。それでも自分たちの話芸で笑ってほしいというパラドクス……。察するに切な過ぎる。

しかし、私が今回の番組で注目したのは、そこではない。

「売れたい! 名古屋で売れて東京へ進出したい!」と口を揃えておっしゃる名古屋吉本芸人の3組の方が、売れてないとしながらも、紹介VTRでみな幸せそうに見えた点だ。

オレンジの田中さんは愛知・津島市のケーブルテレビで、お年寄り向けの体操番組に出演し、おじいさんおばあさんにボール運動を熱心に教え、人気を博していた。また、アンダーポイントさんも名古屋の同じくケーブルテレビでゴールデンタイムの番組を担当するなど、レギュラー番組が7本もある売れっ子であり、充実感たっぷりのご様子。

最も若手だというトラッシュスターさんも、国宝犬山城の城下町で人力車のバイトをしたり、得意だというヒーローショー仕立ての活動をされたりしているお姿は、その日その日を精一杯生きようとする生命力で漲っており、なかなかカッコよかった。

いつか東京に……と願いつつも、居心地がよく、ついつい愛着を持って住み続けてしまう。これが、上昇志向のある方々にとっての名古屋の恐ろしさである。

ちなみに彼らに光を当てるはずの今回の『本能Z』だったが、肝心の3組の“ネタ見せ”はまさかのナレーションバック扱い。

渾身のネタを披露している様子は見えるものの、音が絞ってあって声がよく聞こえない3組のハイライト映像……。

そこへ「生で見たくなった方は、ぜひライブに足を運んでくださーい」という石井亮次アナの軽やかな声が無情に響き、番組は終わった。

平岡敏治(ウェブ・ソーシャルメディアプランナー/ライター)(14日03:05)

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