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9月30日(日)23:30〜24:00放送

USJ〜リアルな世界観を作り上げる〜

ゲスト:篠原賢太郎(『関西ウォーカー』編集長)

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人気テーマパーク「USJ」のゲンバビト
人気テーマパーク「USJ」のゲンバビト

今もっとも人気を集めるテーマパーク『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン』。なかでも、一年で最も多くの入場者が訪れるのが、ハロウィーンイベントが行われる9月〜10月。日本のハロウィーンブームの火付け役とも言われ、毎年大きな盛り上がりを見せている。そんなUSJのハロウィーンが、今年大きく変わる。そこで今回は、USJのハロウィーンイベントを手がける男性と、リアルな世界観を作り上げる女性、2人のゲンバビトに密着した。

“また来たくなる”ハロウィーンを作る男
“また来たくなる”ハロウィーンを作る男

今や当たり前のように各地で行われるハロウィーンイベント。それに先駆け2011年に始まったのがUSJの『ハロウィーン・ホラー・ナイト』。最大の特徴は、単なるコスプレイベントではなく、ホラーの要素を融合したこと。イベントの制作を担当するのは、エンターテイメント部 ハロウィーン・ホラー・
ナイト エグゼクティブプロデューサーの津野庄一郎さん。

一時は入場者数が低迷したUSJだが、ハロウィーン・ホラー・ナイトが始まった2011年を境に、再び客足が急増。なかでもUSJのハロウィーンを一躍有名にしたのが、今年で8年目を迎える『ストリート・ゾンビ』。広大なパーク内の至るところをゾンビが練り歩き、ゲストはすぐ真横でゾンビたちと対面できる。実は、ゾンビたちが持っているチェンソーは、本物。刃は取ってあるそうだが、本物ならではの音やガソリンの匂いを感じることができ、徹底したホラーの世界観が作られているのだ。そんなリアルさもあって人気のイベントだが、8年目となる今年、岐路に立たされているという。
「何年も同じものをやっていると、ゲストの方々も飽きてしまう」
イベント開始当時学生だったゲストも、今では大人。さらに、これまでは夕方になるとゾンビが出てくるので、小さな子ども連れのゲストなどは早く帰ってしまうこともあったのだそう。
「年代問わずハロウィーンを一日中楽しんでいただくのが、今年の大きな目的」
津野さんたちの手によって、今年USJのハロウィーンが大きく変化を遂げる。

本番1週間前。閉園後のパークでは、ゾンビたちの最終リハーサルが行われていた。今までの『ストリート・ゾンビ』は、さまざまなゾンビが、パーク全体に入り乱れて現れていたが、今年は8種類のゾンビをそれぞれのエリアごとに配置。場所によって、出くわすゾンビが変わるという。津野さんが目指すのは、
「歩いているだけで楽しめるストリート・ゾンビ」
元々、ホラーがあまり好きではないという津野さん。だからこそ“楽しめるゾンビ”にこだわる。例えば、『ゾンビ・デ・ダンス』は、奇怪なゾンビたちが突然踊りだし、後半になるとゲストを手招きして一緒にダンスをするというもの。また、女子高生がゾンビになった『キューティーゾンビ』は、怖さよりも楽しさが勝る。さらに今年は、これまでのゾンビの常識を覆す新たな試みも行われる。それが、ゾンビとの写真撮影。これまでゲストがSNSに投稿した写真はゾンビがブレていることが多かったのだそう。そのため、SNSなどに使ってもらえるように、ゾンビと一緒に写真を撮れるチャンスを提供するというのだ。
「エゴサーチは徹底的にやります。ゲストのコメントを見ながら、確かにそうだなというところは問答無用で改善します」

元々特殊効果が好きで、USJのオープン当初は火薬の担当をしていたという津野さん。そこでショーの楽しさを知り、イベント制作の道へ。しかし、それまでお化け屋敷などを作ったことがなかったため、ハロウィーンイベントを作るにあたり、どういうことで人が驚き、どういうことで楽しめるのかを徹底的にリサーチしたという。リハーサルでも常に考えているのは、どうすればゲストが楽しめるかということ。
「リハーサルで見るのはゲスト目線。造り手のエゴは僕らには必要ない」

さらに、ゲストの幅を広げるため今年は新たに『大人ハロウィーン』『こわかわハロウィーン』という2つの新しい軸を入れた。可愛いキャラクターたちが迎えてくれるのが『こわかわハロウィーン』。このエリアなら、小さな子どもたちも夜までハロウィーンを楽しめそうだ。一方、さらなる恐怖を感じたい大人に向けて作られたのが『大人ハロウィーン』。そこには、津野さんが作る新たなアトラクション『ホテル・アルバート』がある。ターゲットは、『ストリート・ゾンビ』を卒業した大人の女性。40年前のホテルを舞台に、そこで起こる事件をゲストが登場人物の一人となって体験するというものだ。アトラクションの中では、全員が別々の部屋へと案内され、友人同士であってもそれぞれに全く別のストーリーが用意されているという。津野さんがこのアトラクションを作るにあたり、徹底的にこだわったのが世界観。
「ゲストにいかにこの物語の中に没入していただくか。音響、照明、匂い、衣装など、細かいところに一つ一つこだわっていくことで、ホテル・アルバートという世界に思いっきり没入していただけるかなと」
そのため、家具なども40年前にアメリカなどで実際に使われていたものを取り寄せて使用するなど、とことんリアリティを追求したという。そんな津野さんが目指すのは“世界最高”。
「“世界最高”のエンターテインメントをゲストに提供していく。どんなに小さなショーから大きなショーにも必ず“世界最高”を盛り込んでいこうと思っています」

あえて“汚す”エイジングクルー
あえて“汚す”エイジングクルー

USJには全部で9つのエリアがあり、それぞれに独自の世界が広がっている。その世界観を作り上げているのが、今回密着する2人目のゲンバビト。エイジングクルーの平松穂乃香さん。エイジングとは、時代や環境に合わせたサビや汚れなどをペイントで表現すること。平松さんたちが手がける塗装によって、パークによりリアルな風合いが生まれるのだ。

例えば、恐竜が住む大自然の世界をあらわしたジュラシック・パークエリア。水が流れている岩山は、水に濡れて岩肌が赤く変色し、ところどころに苔が生えている。あまりにも馴染んでいて本物にしか見えないが、平松さん曰く、それらは全て塗装で表現したものなのだそう。さらに、世界恐慌に襲われた1930年代の貧しいダウンタウンという設定のニューヨーク・エリアは、建物の扉に砂埃がついて白っぽくなっており、手すりも錆びている。これらも全て塗装。サビが入ってボコボコした質感も、塗料に砂を混ぜて忠実に再現しているという。そして、このニューヨーク・エリアのエイジングこそ、芸術大学出身の平松さんがこの仕事を志したきっかけでもある。
「手すり一つでも建物によってサビの入り方が違う」
ゲストとして訪れたときに、至るところに施されたエイジングに感動し、アルバイトの募集に応募。念願叶って、この仕事に就いたという。

続いて、平松さんに案内してもらったのは、ジョーズなどのアトラクションで賑わう、漁村という設定のアミティ・ビレッジ。このエリアのエイジングの特徴は、
「潮風にさらされて、グレーっぽく変色した表現が多い」
なかでも平松さんがこだわったのが、樽。潮風にさらされて白っぽく、乾燥した感じが塗装で表現されている。大きさや形が同じ樽でも、エリアごとに色が違う。こうした細やかな技が、全く違った世界観を作り出しているのだ。
「世界観を想像させるキッカケの一つとなるように、世界最高のクオリティーを維持することを心がけています」

深夜1時。この日は、サンフランシスコ・エリアの樽にサビをつけるエイジング。6種類の色を混ぜ合わせて、サビの色を表現するという。作業を行うのは、真っ暗な屋外。まずは、樽全体に白っぽい色を塗っていく。ただサビを入れるのではなく、本当の経年劣化のように、白い埃を描いてからサビを表現するのだそう。真っ暗な中で、片手にライトを持った状態で塗装していく平松さん。規則的にサビを入れると不自然になってしまうため、細かい部分まで少しずつ変化を加えながら色を入れていく。繊細な作業が行われること2時間。見事な樽のエイジングが完成した。世界観を作り上げるために、細部にまでとことんこだわる。そんな平松さんたちの仕事が、ゲストをひとときの別世界へといざなっている。

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