2017年8月6日放送
教えて!ドクター
★8月のテーマ「がん対策の新展開」
「がん」という言葉自体をいろいろな生活の場面で聞く機会が増えたと思います。一つはがんの患者さんの数自体が増えたということもあります。また従来は社会が「がん」という言葉を避けていた部分がありますが、きちんと前向きに真正面からこの病気に向かおうという変化の表れでもあると思います。一つのきっかけとなったのは2006年(平成18年)に「がん対策基本法」という法律ができたことです。法律によってがんという病気に対して前向きに日本全体で取り組んでいこうとになりました。それまでにも社会全体でいろいろな所で、いろいろな立場の方々ががんという病気に対して取り組んできた部分もあります。けれど同じ気持ちを持ちながらバラバラな事をやっていたのでは、なかなか良い結果が現れません。「がん対策基本法」に基づいて、具体的に「どんなことについて」、「どのように取り組んでいくのか」ということを決めたのが「がん対策推進基本計画」とよばれる計画です。ほぼ10年になりますが、今まで5年ごとに過去2回作られています。今では非常によく耳にされると思いますが「がん拠点病院」が整備され、治療だけでなくて、いろいろな情報発信をしたり患者さんの相談を受けたり、医療従事者の研修やトレーニングの場を提供したりして、どこにいても受診できるようなかたちが整備されました。「がん拠点病院」以外にも「緩和ケア」を充実させようということもされてきました。また「がん登録」ということもされています。それまではがんの患者さんが増えてきたことは何となく数字で統計はでていたのですが、きちんとした形で統計をとって、その数字をもとにそれまでの取り組みの評価をして、さらに今後の計画をたてるような目的でがんの登録がきちんとなされるようになりました。2期目の計画は特に小児がんの対策で、がんの教育です。これは大人になる前の段階で小学生や中学生の時に例えば「たばこは吸っちゃいけませんよ」とか「検診をうけましょうよ」等、がんの早期発見につながるような内容の教育を充実させようということが行われてきました。何よりも治療が進歩してよくなりました。そういったことが背景にあってがんの患者さん、あるいはがんの治療を受けている患者さんの社会復帰ということに目が向けられるようになってきました。まだまだ十分ではない点もあると思いますが「がん対策推進基本計画」があったおかげで、社会全体ががんの患者さんの就職やそれまでの家庭生活との両立といった点に目が向けられるようになったことは非常に大きなことだと思います。
スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪
<力を入れて取り組んでいる事>
当院では「高齢者にやさしい病院」「患者と職員が笑顔になれる病院」という理念もと、入院・外来診療の他、温かい在宅医療を目指して取り組んでいます。私は訪問診療チームを担当し、そのなかで外来看護師を同行訪問看護師として育成しています。
同行訪問看護師とは医師の訪問診療に同行し、診療の補助や患者のケアについてご家族や訪問看護師、施設スタッフとの間で様々な調整を行っております。
また地域包括ケアシステムに関わることとしては、中村区・中川区などの近隣事業者と地域連携スタッフ会議を行い、共同でパンフレットの作成や症例カンファレンス・勉強会の他、最近感じた「あったか報告」を行い、繋がりを深めています。
<心に残るエピソード>
外来診療は病院の中にある在宅医療だと思い、生活状況に合わせて寄り添うことを大切にしてきました。しかし外来での関わりでは生活状況まで具体的に見えてはいませんでした。訪問診療チームとして関わる中で、患者様やご家族の問題を解決することや要望に応えて療養生活が継続できるよう安心感をあたえながら、社会資源につないでいくという役割の大切さを実感できました。また温かみのある取り組みとしては手作りの誕生日カードと歌のプレゼントを行っております。患者様の中には涙を流して喜ばれる方もいらっしゃいます。
<これからの医療の課題>
在宅では、ご本人やご家族の方が「どうしたいか」ということについて、自己決定支援を行うのですが「自宅だから難しい」「寝たきりだから出来ない」と言って、専門職の中でもあきらめてしまう場面があります。そんな、「・・・だから、きっと出来ない」とあきらめていたことを可能にするような強いチームを作っていくことが課題だと考えています。そして、地域の医療機関やさまざまな事業所の方々と連携・協力しながら、患者様やご家族が安心してこの地域で療養生活を続けられるようサポートしていきます。