2015年4月18日放送
健康ニュースのキーワード

★キーワード「医療への信頼」
4月11日~13日、京都で「日本医学会総会」が開催されました。今回、医療への信頼や安全をテーマにしたシンポジウムがあり、このシンポジウムには一般市民も参加できるという特別企画でした。シンポジウムの座長をつとめたのは、名古屋大学医学部附属病院の医療の質・安全管理部の長尾能雅教授で、「医療の安全を確保するには、医療チームの情報共有が重要で、その医療チームのメンバーには、患者さんや家族も含まれる。チームのみんなで忌憚なく意見を交わしながら、医療の安全と質の向上を目指す文化を構築する必要がある」と指摘していました。アメリカでは、患者の権利を守る視点からも、全米の病院で、そうした取り組みが推奨されているそうです。医療事故などに直面した時、どこに改善すべき課題があるかについて、事故のあった部局の枠を超えて病院全体で、自由な雰囲気で誠実に議論できる医療文化が日本でも広まってほしいものです。
教えて!ドクター
★4月のテーマ「健康寿命と栄養」
「ロコモティブ症候群とサルコペニア」
「ロコモティブ症候群」とは日本整形外科学会が提唱した言葉で、筋肉・骨・関節という運動器に障害が出てきて、移動動力の低下した状態をさし、要介護状態の原因としても重要な因子です。そしてこの3つの運動器のうち、筋肉の萎縮を表している状態をサルコペニアと言います。誰しも年齢とともに骨格筋が少しずつ減りますが、極端に減ってしまうと転倒しやすくなったり、力が入りにくくなったりして要介護に繋がることから、注意喚起をするうえでこのような言葉が生まれました。サルコペニアと診断するうえでは様々な定義があります。骨格筋の減少は一般の人にはわかりにくいものですが、例えば自分で歩くスピードが遅くなったこと、筋力が落ちたなど(ペットボトルのふたが開けにくくなった、雑巾が絞りにくくなったなど)はサルコペニアを疑った方が良いでしょう。放置しておくとどんどん悪化してしまうので予防のために運動することと、十分な栄養を摂ることが大変大事であるといわれています。私が一番いいと思うのは、散歩を始めることです。それだけでもかなり脚の筋肉を使いますので、まずは散歩から始めてみましょう。筋肉を使わないでいると廃用(痩せて筋肉が落ちること)してしまい、サルコペニアに繋がってしまいます。
スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪
<並木病院について>
並木病院には212のベッドがありますが、全て医療療養病床です。急性期で治療を受けられた後、医療処置が必要な状態でご自宅や施設での療養が困難な方の受け入れをしています。入院期間が3~6か月と長いため、その間にリハビリを行い回復状況を見ながらその方の方向性を検討していきます。入院していただくとカンファレンスを行います。医師を始め看護師やリハビリスタッフなどの多職種で、患者さんにとってどんな治療やケアを進めることがいいのか検討し方向性を出していきます。
<心に残るエピソード>
夏場に脱水症で入院された90歳の独居の女性の話です。短期間に2回同じような状態で入院されました。2度目の入院の際には認知症が進んでいることがわかりました。認知症については、娘様は全く気付いておられず、自立した生活ができていたため介護認定も受けておられませんでした。入院期間中に認定調査を受けていただき、介護サービスを受けられることがわかりました。現在では、認知症の治療薬も開始され、比較的落ち着いた状態で、デイサービスと家事援助を受けて自宅で過ごされています。娘様は、ご本人の意思を尊重して住み慣れた自宅で出来るところまで過ごさせてあげたいとフォローしてくださっています。
<今後並木病院のような病院が持つ課題>
高齢化が進み医療や介護の在り方が問われていると思います。高齢者が住み慣れた地域や自宅で住み続けられることを目的に、地域包括ケアシステムが推進されていますが、並木病院でも地域の中で高齢者の慢性期の医療を担う病院としてその役割をしっかりと果たしていけるようにしたいと考えています。
<スマイルメッセージ>
日頃は病院の機能や役割の違いをあまり意識されていないことが多いのではないかと思いますが、ご自身や身近の人が療養や介護が必要になった時に困らないよう、ご自身が住んでいる地域にはどのような病院があるのか、どのようなサービスを受けられるのか、またどこに相談に行けばいいのかについて知っていただくことが大事かと思います。