2025年
第133回 株式会社CBCラジオ番組審議会
| 開催日 | 令和8年6月19日(金) |
|---|---|
| 出席 (敬称略・五十音順) |
榊原栄一、田中英成、堀田あけみ 牧洋一(副委員長)、松尾清一(委員長) |
| 書面参加 (敬称略・五十音順) |
松井 保幸 |
| 議題 | I. 番組審議「町の自転車屋さん 100年をこえて」 |
- I. 番組審議「町の自転車屋さん 100年をこえて」
| 放送日時 | 2026年5月29日(金)午前3時00分~午前3時45分 |
| スタッフ |
プロデューサー 菅野光太郎 ミキサー 豊田昌朗 ディレクター・語り 植野聡太 |
《企画意図》
枕詞に『町の~』とつくようなお店、「個人商店」は、少しずつ姿を消しています。それは町の自転車店も例外ではありません。業界全体の高齢化と、後継者の不在に加えて、買い替えサイクルが早まったことにより、安全に長く乗るための「修理・メンテナンス」を主な役割とする町の自転車店は、逆風にさらされています。実際、愛知県にある自転車の個人店で作る「愛知県自転車モーター商協同組合」に加盟している店舗数は、昭和33年の設立時に2,485あったところから、令和8年3月末では389となっています。この先、整備を担うお店が減っていけば、自転車は「不便な乗り物」となってしまうかもしれません。
また、自転車には自動車のように車検制度が存在しないため、ブレーキさえ効けばいい、とボロボロの自転車を常用する人もいれば、自ら道具をそろえて技術を学び、自分の手でメンテナンスを行う人もいます。運転免許制度もないため、たいていの場合見様見真似で乗り方を身につけます。人と自転車の関わり方は、厳格に制度化されたものではなく、身近なだけに「曖昧」だと言えます。法令や時代によって、人と自転車の距離や、社会における自転車の位置づけは移り変わってきました。
2025年をもって創業100周年を迎えた名古屋市西区にある町の自転車屋さん・自転車のフジサワは、ある意味その目撃者です。国内製造が盛んになり、一般大衆に自転車が普及していく時代から、今に至るまで、自らの仕事にこだわりを持ち、お客さんに寄り添ってきた町の自転車屋さんと、それをとりまく人たちを見つめます。
《企画内容》
地下鉄鶴舞線・庄内緑地公園駅を出てすぐのところにある「自転車のフジサワ」は、2025年に創業100周年を迎え、店主の忠さんは92歳となった今も店先に立って工具を握り、自ら修理、点検、整備を行っています。特に忠さんは、スポーツタイプの自転車にこだわりを持っており、古いものから海外のものまで、店内には自ら集めた珍しい車体やパーツが並んでいます。そのこだわりをもとめて、遠方からお客さんがやってくることもあります。1年前の春、CBCラジオへ就職したことで大阪から名古屋に出てきた私は、近所にあった自転車のフジサワで生活用の自転車を購入しました。それがきっかけとなって今回の取材は始まります。忠さんの半生や家族の思い、お客さんとの交流に耳を傾け、個人商店が少しずつ町から姿を消す現状を踏まえつつ、社会のなかで町の自転車屋さんが果たしている役割を考えます。また、忠さんの仕事に対する向き合い方を中心に、「曖昧な乗り物」である自転車と人との関わり方を今一度見つめなおします。
《審議委員の主なご意見》
- 町の本屋や飲食店が消えゆく話題はよくあるが、「町の自転車屋」という着眼点が絶妙だった。
- ディレクター自らの語りに関しては経験が浅いため、プロに比べると声のトーンやテンポに少し「たどたどしさ」を感じたが、結果としては「手作り感」があって好意的に受け止められた。
- 入社2年目の若手のディレクターでありながら、古い店の佇まい、器具、家具などの情景が、目に浮かぶように描かれており、描写のセンス、言葉のチョイスが本当に素晴らしかった。
- 大正から令和へ、生活の足がオートバイや車へと移り変わった100年の歴史や高度経済成長期など、1つの自転車店を通じて時代の流れを浮かび上がらせた構成が秀逸だった。
- 自転車をめぐる規制や環境が劇的に変化しリスナーの関心が高まる中、これらの社会背景への言及がやや表面的だったため、もう一歩踏み込んだ深掘りがあると一層良かった。
- ディレクターの才能と局の育成体制を高く評価する。歴代の優秀なプロデューサーの背中を見て、見事な後継者が育っている。今後も局全体で手厚く支援と育成をしてほしい。
