番組審議会

2017年

第47回 株式会社CBCラジオ番組審議会

開催日 平成29年11月17日(金)
出席委員
(敬称略・五十音順)
近藤清久 杉浦昭子 団野 誠(副委員長)
堀田あけみ 松尾清一(委員長)
議題 1. 番組審議
「ドキュメンタリー『最期への覚悟』」
1. 番組審議
「ドキュメンタリー『最期への覚悟』」
放送日時 平成29年10月15日(日)19:00~20:00
プロデューサー 森合康行
ディレクター・音効 菅野光太郎
ミキシング 奥野賢司
ナレーション 榊原忠美(フリー)

《企画意図》

 日本は今「超高齢社会」です。平成27年の65歳以上の高齢者数は、全人口の4人に1人の割合となる3,392万人でした。また、独居世帯も増えています。平成27年の厚生労働省の調査によると65歳以上の高齢者世帯のうちおよそ半数が、一人暮らしの独居世帯でした。さらに今後、高齢者数は急増し、いわゆる2025年問題に直面すると言われています。「2025年問題」とは、団塊の世代が2025年頃までに75歳以上に達し、介護・医療費等社会保障費の急増が懸念されている問題です。
 国は対策として今より病院のベッド数=病床数を減らし、病院から在宅医療への転換をはかる事で医療費削減を考えています。しかし在宅医療には、診療をする医師と訪問看護師、生活を支える介護スタッフらの緊密な連携が必要ですが、それらが上手く行っていないのが現状です。
 愛知県は、医師や介護スタッフの連携を進めるために交流会を開いたり、医師と介護スタッフが患者のデータをインターネット上で共有するシステムを推進したりしていますが、成果はまだ出ていません。
 番組では、名古屋市内で在宅医療をおこなう杉本由佳医師と独居の患者に密着しました。独居の患者を家で看取るためには、医療・介護の現場で何が必要なのか、また現在の在宅医療の問題を考えます。

《企画内容》

 名古屋市千種区の「すぎもと在宅医療クリニック」杉本由佳医師(46)は、16年前から地域の在宅医療に取り組む、在宅医療のパイオニア的存在です。このクリニックは院長の杉本先生と事務員の2人だけですが、24時間の診療を行っています。
 杉本先生は、在宅医療を行うために、様々なスタッフと連携して患者を診ます。在宅医療のためには、医師、訪問看護師、生活のケアをするヘルパー、薬を家まで運ぶ薬剤師、その他、入浴サービスや訪問リハビリ、スタッフのスケジュールを調整するケアマネジャーなど多くの人たちが関わります。杉本先生は、患者が「より楽に、より長く」生きられる様に、関係スタッフのリーダーとして訪問診療を行います。
 杉本先生は、去年11月から末期の乳がんで脳腫瘍を患う一人暮らしの前山和子さん(75)を診療しています。和子さんの家では、杉本先生、訪問看護師やヘルパーらが和やかな雰囲気で訪問診療・介護を行います。しかし他の患者も担当する訪問看護師らスタッフは、杉本先生以外の医師との連携の難しさを感じています。
 国や愛知県は、高齢社会が進む事を見越して在宅医療を推進する様々な施策を行っています。しかし、効果は上がっていません。団塊の世代が、75才以上となる2025年まで、あと8年。国、県、医師、患者それぞれの「覚悟」が必要です。

議事の概要

   《審議委員の主なご意見》

  • 重要な社会問題に正面から向き合った素晴らしい番組で、他人事ではなく自分のことだという気持ちで聞けた。死を宣告された人の生き様に触れて、生きがいとは何かということを改めて考えさせられた。
  • 人が亡くなる現場を取材するのは、ディレクターも取材相手も相当な覚悟がいると思うので頭が下がる思いがした。家で死を迎えたいイコール家族と一緒に居たいと思っていたが、一人暮らしの方も多いということを知り大変勉強させてもらいました。
  • 在宅医療に尽力する杉本先生のような医師が多くなってほしいと感じた。杉本医師のような活動は特異な例なのかについて、もっと問いかけがあっても良かったと思う。
  • 本人が家に帰りたいといっても家族の理解がなく病院で最期ということも多いのは、患者本人も家族も知識不足が大きな要因になっていると感じるので、このような番組でもっと取り上げて頂けると良いと感じる。
  • 老いや看取りという誰にとっても重要な問題について、それぞれの立場で考えるよいきっかけになる番組だと思う。このような取材のノウハウを後輩ディレクターにも伝えてCBCラジオの伝統にしてほしいと思う。

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