|
|
|
|
一昨年以来2回目の音楽祭登場となった今回は、全曲ア・カペラによる演奏で、“世界に冠たる”その実力を遺憾なく発揮するパフォーマンスとなった。ピアニシモからフォルテシモに至るダイナミックレンジの広さや、あるときは柔らかく、あるときは力強く、縦横無尽なトーン・コントロールは、冒頭の「天体の組曲」から聴衆の心を捉え、続く武満作品で深い感動を生んだ。「稀有なほどの完璧な音程」というコメントは、当日会場にいたベテラン調律師から頂いたもの。これらが全て相俟って、後半の大作「晩祷」の名唱に繋がった。合唱団2011/12シーズンの最終公演として舞台上セレモニーが行われ、メンバーにとっても記念の公演になったようだ。
公演日のアンコール曲
ヤン・サンドストレム : ヘラジカの歌
武満徹 : 〈うたII〉から さくら
ヒューゴ・アルヴェーン : そして乙女は輪になって踊る
|
2010年の「名古屋国際音楽祭」でモーツァルトとフォーレのレクイエムを演奏、絶賛を博したスウェーデン放送合唱団がいよいよア・カペラで登場する。圧倒的な美声、自在な声のコントロール、洗練されたアンサンブルをベースにしたその“歌”は曲の求めるものに応じまさに千変万化。聴く人の魂に深い安らぎを与えてくれるラフマニノフの傑作「晩祷」は当夜の白眉。人間の声が紡ぎだす豊かな音楽世界を味わう。 |
|
|
ペーター・ダイクストラ |
|
音楽監督/指揮 |
ペーター・ダイクストラ |
プログラム |
マントゥヤルヴィ:「天体の組曲」より抜粋
武満徹:さくら(『うたI』より)島へ(『うたII』より)
ドビュッシー:シャルル・ドルレアンの3つの歌
ラフマニノフ:「晩祷」より第1〜9曲
ヒューゴ・アルヴェーン:「夕べ」「乙女は輪になって踊る」 |
|
|
|
|
|
声だけで表現される豊かな音楽世界
2010年の「名古屋国際音楽祭」でモーツァルトとフォーレのレクイエムを演奏、お客様からも、共演した名古屋フィルの団員からも絶賛を博したスウェーデン放送合唱団がいよいよア・カペラで登場する。圧倒的な美声、自在な声のコントロール、洗練されたアンサンブルをベースにしたその“歌”は曲の求めるものに応じまさに千変万化。
「北欧は歌の国だ」という片山杜秀氏にスウェーデン放送合唱団への期待を聞いた。
北欧は「歌の王国」なのだ。
なぜか。やはり北欧人特有の声帯の強さがあるだろう。寒冷で厳しい環境を生きのびる。冬の嵐の中でも通るような立派な声が必要だ。北欧の人々は何千年もそうやって生きてきた。ビルギット・ニルソンがたまたま強い声帯の持ち主だったわけではない。そういう人がたくさん居るのがスウェーデンだ。
しかも酷薄な自然のもとでは個人プレーばかりやっていても生き残れない。共同作業が大事。みんなで助け合う。北欧にヴァイキングのような統制のよくとれた海賊集団が現れたのは偶然ではない。したがって北欧は単なる「歌の王国」ではなく「合唱の王国」にもなる。
声に恵まれているうえに集団行動が得意なのだから当然だ。そして現時点での北欧の最高峰の合唱団と呼ぶべき存在がスウェーデン放送合唱団である。ヴァラエティに富む声がある。いざというときはとてつもない迫力が出る。超絶技巧をものともしない技術がある。古楽から現代の前衛音楽まで対応出来ないものはない。いろいろな国の言葉も上手にこなす。やはり耳がいいのだ。
そんな名団体がまた日本にやってくる。声のユートピアに溺れ、至福のひとときを味わえるにちがいない。
片山杜秀 |
|