今までの公演

#264

 

日向丈 「不意打ち」

スジナシ史上初の驚愕のドラマとなった今回。僕らスタッフより、鶴瓶さん自身が決して忘れることの出来ないスジナシとなったことは間違いない。鶴瓶さんが新境地を開拓?した名作、それを演出したゲストは“日向丈”さん。味のある芝居で映画を中心に活躍している名バイプレイヤーだ。

セットは「都会の公園」。夜。何が起こっても不思議ではない。そんな夜。

独りで芝居の稽古をしている鶴瓶。そこにふらっとやってきた日向。ここでよく芝居の稽古をしているという鶴瓶。一方の日向は“ある人”と一緒に5年程前よくここに来ていたという。“ある人”と一緒に・・・。

心地よい夜風に身を任せながら2人は世間話を始める。芝居の苦労話を聞きながら、芝居の稽古に付き合う日向。ひとしきり稽古を終えると、鶴瓶が日向の素性を聞き始めた。

“ある人”のところでずっと働いていたが、その人のもとを離れて5年になる。久しぶりに会いたくなって、いつも一緒に来ていたこの公園にやってきた。ひょっとしたら会えるかもしれないと思って・・・。そうゆっくりと話す日向。

日向はその人のためにずっとやってきたという。いろんなことに手を染めてきた過去が日向の力強い目から感じ取られた。

「だから最後に会いたいなあって・・・」と言う日向の目は潤んでいるようにも見える。

そして沈黙・・・。

その沈黙を破ったのも日向。

「ヤスさん・・・」

と鶴瓶に語りかけた。

「え?」

「俺、わかりませんか?俺ヤスさんのために相当やってきたんだけどな」

しかし鶴瓶の表情は硬いまま。日向のことを拒絶しているように見える。

「声じゃわかんないんだ。顔変えたら気付かないんだ・・・」

ほんのわずか顔に浮かんだ失望が、日向を覆いつくすのに時間はかからなかった。

「なんで俺の名前・・・顔変えたら気付かないって・・・・え・・・」と絶句する鶴瓶に日向は自ら身を明かした。

「政吉ですよ・・・・」

「・・・」

「ここに持ってますよ、預かったてたもん」と鞄を鶴瓶に見せる。もう鶴瓶は逃げられない。

しかし「・・・誰かと勘違いしてますよ」と鶴瓶から返ってきた答えは予想外のもの。

日向の目から力は消え、ゆらーっと死人のように立ち上がり鶴瓶に近づく。鶴瓶は身の危険を感じ咄嗟に逃げる。そして離れた位置から「政吉・・・」と呼びかける。鶴瓶はやはり覚えていた。日向の目に力強さが蘇り、かつての部下は再度鶴瓶さんに忠誠を誓ってみせた。しかし、鶴瓶の温度は低く、引退すら考えていることを知ると、日向の信頼は絶望へと変わっていった。

そして全てを吹っ切っるために、日向はひとつだけ願いを聞いて欲しいと言う。

「目を閉じて俺の話聞いてください」

復讐・・・。

その言葉が鶴瓶の頭に浮かんだ。政吉がこれまで耐え忍んできた過去、そして自らを押し殺して自分に尽くしてきたことを思い、鶴瓶は目を閉じた。覚悟を決めて、その命を差し出す決心をした。

静かに立ち上がり、日向は鶴瓶を見下ろす。穏やかに目を閉じて座っている鶴瓶。そしてゆっくりと日向の顔が鶴瓶に近づく。

「ずっと、好きでした」

言い終わるより早く、日向の唇が鶴瓶の頬に吸い付いた。

スジナシ史上初のキスは男性によって成就した。

中井美穂渾身のガッツポーズでOKで〜す。

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