ドラの巻【CBCドラゴンズ情報】

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野球の敬遠革命〜田尾は岩鬼は何思う?

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中日ドラゴンズで活躍した田尾安志選手を語る時に必ず出てくるのは、1982年(昭和57年)10月18日、近藤貞雄監督の下でセントラルリーグ優勝を決めた横浜スタジアムでのゲームである。

ドラゴンズがマジック1で迎えたこのゲームには、優勝とともに首位打者争いがかかっていた。打率トップは横浜大洋ホエールズの長崎啓二選手(現・慶一)で3割5分1厘、2位は田尾選手で3割5分0厘1毛。その差はわずか9毛差で、田尾が1本ヒットを打てば逆転する僅差だった。
長崎にタイトルを取らせたいホエールズは長崎をスタメンから外してベンチに置き、田尾を毎打席敬遠するという策に出た。田尾は最後のチャンスとなった5打席目、3ボールからの敬遠球を2球続けて空振りする。
打者としての勝負を避けられたことに対する猛烈な抗議であり、その姿にドラゴンズファンはもちろん、多くのプロ野球ファンは声援を送った。そんなシーンももう見られなくなるのか。

敬遠をする場合に申告すればボール4球投げなくてもいいという「申告敬遠」規定が野球ルールに採用された。先日開かれたプロ・アマ合同の日本野球規則委員会で決まったのだが、守備側の監督が審判に対して敬遠の意向を表明すれば、投手は1球も投げないまま打者は「四球」として1塁に出塁できる。


今回のルール変更の理由には、2020年の東京五輪での野球競技復活がある。
全日本野球協会では「日本の国内ルールが、米メジャーリーグや国際大会との食い違いがあってはいけない」と説明した。メジャーリーグではすでに2017年シーズンから、試合時間短縮を目的に「申告敬遠」を採用している。

しかし、いち早く昨シーズンにメジャーリーグにおいて、バッターボックスで実際に“投げない敬遠”を経験したイチロー選手は「ダメ。面白くない。ルールを戻すべき」と語った。
野球選手は試合中のリズムを気にすると言う。守備の間にバッティングの意識を高めると語る選手もいて、そういう選手は指名打者に回ることを嫌がったりもする。試合時間の短縮以上に、ゲームのリズムにどんな影響が出るのだろうか。

野球漫画『ドカベン』でも敬遠四球はドラマを盛り上げる要素として登場している。
主人公・山田太郎捕手に勝るとも劣らない人気キャラクター・岩鬼正美選手は、他の選手が打たない“悪球”を見事に打つ選手で始球式のボールをホームランにしたほどだが、岩鬼が敬遠のボールを打つドラマも新ルールではなくなってしまう。
また山田や岩鬼の所属した明訓高校のエース里中智投手が、迷いながら投げた敬遠のボールを、ライバル横浜学院高校の強打者・土門剛介選手に痛打されるシーンも印象的だが、こうした場面も今は昔か。
敬遠球打ちについては、実際、1990年(平成2年)6月2日の讀賣ジャイアンツ対広島カープ戦では、巨人のクロマティ選手が敬遠のボールを二塁打にしてサヨナラ勝ちしたというドラマもあった。何が起きるかわからない、だから野球は面白いのだが・・・。

きわどいプレイの判定にビデオ映像の検証を求めることができる「リクエスト」。
延長13回から無死1,2塁で試合を開始し決着がつくまで繰り返す「タイブレーク」。
「申告敬遠」と共にいずれも今年からお目見えしていく新ルールである。
どこか“合理的”な印象が否めないが、法律が時代と共に改訂されていくのと同じように、野球ルールにも変化が訪れてもおかしくはない。
ただ、一度決めたルールだから、と頑なに進むのではなく、常に検証を心がけ、場合によっては微修正していくような柔軟性を持って臨んでほしい。野球本来が持つ面白さ、醍醐味、ドラマ性などがルール改正に伴いマイナス面の影響を受けることなく、ますます進化していくように・・・。

5打席連続の敬遠によって首位打者を逃した田尾選手、その打席の印象と記憶は、首位打者を取った選手と同等に強烈であることは歴史が証明してくれている。

【東西南北論説風(26)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】(16日10:17)

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