2017年7月30日放送

教えて!ドクター

(名古屋大学 大学院 医学系研究科 救急・集中治療医学 教授 松田 直之 先生)

★7月のテーマ「身近に直面する救急医療」
<心肺停止とAED>
 救急医療の現場で、一般の皆さんと共有したい重要な情報としてAEDがあります。AEDは、意識のない、倒れている人に対して、もし致死的な不整脈があれば、除細動してくれる機械です。Automated=「自動的に」、EはExternal=「体外式な、体の外から」、DはDefibrillator=「除細動」、つまりプルプルプル震えているような、適切に動いていない心臓をしっかりさせて、心臓の震えを止めるというイメージです。
 AEDの使い方ですが最初にスイッチを押すと音声ガイドで色々説明してくれます。このため、すぐに誰かに持ってきてもらうように頼み、届いたらまず、電源を入れて下さい。この音声ガイドに従います。もちろん、この間に胸の真ん中を1分間に100-120回/分の速度で深さ5-6cmで押して、戻します。押して、戻す。押して、戻す。1秒に2回行うイメージです。
 そこにAEDが到着した場合、スイッチを押すことで、例えば「パットを胸に装着してください」と言います。言われた音声ガイドにそって、作業を行っていくことになります。「心電図の解析中です。離れて下さい」。この際には、心臓マッサージを中断して下さい。蘇生中の方から離れます。「除細動の適応です。離れて下さい」。この際も、蘇生中の方から離れます。
 音声に注意していただければ、問題なく、AEDを操作できます。AEDはシール(パット)を右鎖骨下と左乳房下胸部の2箇所に貼ることによって、心電図を解析してくれ、「これは除細動したほうがよい心電図波形だ」となると、「離れてください」、「ボタンを押してください」などということを言ってくれます。ちゃんと説明してくれることをあらかじめ知っていると良いでしょう。
 2020年に東京オリンピックが開催されますが、同じように名古屋では毎年、ウィメンズマラソンin NAGOYAが開催されています。1万人が一緒にマラソンなどの運動をしていると、1名に心肺停止が起こる可能性があるとされています。ウィメンズマラソンなどでも、心肺蘇生に備えて、また実際にAEDが活躍しています。心肺停止において、すぐにAEDで対応すると社会復帰が期待できます。もちろんAEDがすぐ到着するわけではないので、それまでの段階では基本的な心肺蘇生をうまくできる人達で対応して下さい。
 心肺蘇生では、まず心停止中の方の「顎をあげる」ようにすること、次に、絶え間なく心臓マッサージを行うことが大切です。今は30回に2回息を吹き込むということにしていますが、とにかく顎をあげた状態で胸の真ん中あたり5-6 cmを目安に、心臓マッサージをして下さい。1分間に100-120回を目安として「心臓を押す、戻す。心臓を押す、戻す。」ということを続けて頂くようにしています。暑いさなかにも、反応がない、心肺停止を疑うケースがあります。皆さんの手で、救命医療に参加されて下さい。

スマイルリポート〜地域の医療スタッフ探訪

北澤 彰浩 先生(佐久総合病院 診療部長)

<力を入れて取り組んでいる事>
 訪問診療をさせていただいております。患者さんお一人お一人かなり高齢の方も多いので、それぞれの方に「心づもり」というかたちで「今後どのようにお過ごしになりたいですか?」とお聞きするようにしています。それを医療チーム皆でかなえてあげたいと思いますが実は死を意識しなければいけないということになります。一般の患者さんや地域の方達に「死は決して特別なものではない。」ということを理解していただく活動にも力をいれています。「自分がどのように最期まで生きたいか」「どこで過ごしたいか」「家族とどのようにして生きていきたいか」というようなことを含めて「心づもり」という言葉を使わせていただいています。
<心に残るエピソード>
 その方は「最期までご自宅で」とおっしゃっていのですが、急変されて救急車で病院に運ばれてきました。その方がなぜ「最期までご自宅で」とおっしゃったかと言いますと90代の方ですが「1番自分にとって大事なことは夜晩酌をすることだ。」とおっしゃっていたんですね。普通ですと病院の一般病棟でお酒を飲むことは難しいんですけども、その方が人生の最期の時間が近いということを私も感じていましたし、ご家族も感じていましたし、何しろご本人が一番感じてらっしゃいましたので、その意向を何とかくんであげたいと思いました。その病棟の師長に相談したところ、その師長も以前在宅医療に関わっていた看護師だったので、「そういう方の思いをかなえてあげたい。」ということで「いいですよ」となり、最期は一般病棟のお部屋で(当然個室ですが)お酒をお飲みいただいたということがあります。一口一口飲みながら「うめーなー」「うめーなー」「これが最期の晩酌なんだろうなー」とおっしゃっていました。ご家族や我々にも「こんなことしてもらえるなんて本当にわしは幸せだー」とお礼を言ってくださり、次の日の朝8時くらいにお亡くなりになりました。本当にご本人の希望をかなえてあげるためには、やはり一番近くにいるご家族や一般市民皆さんが死に対してどのように考えるか、生きるということをどのように考えるかということが関わってくると思っております。