2017年1月1日放送

教えて!ドクター

(名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
理学療法学講座 教授 内山 靖 先生)

★1月のテーマ「リハビリテーション医療の最新情報」
<リハビリテーションとは>
 リハビリテーションと言いますと、動かなくなった関節を動かしたり、筋肉を付けたりというイメージが多く持たれているかもしれません。本来は「リ・ハビリス」ということで「再び適応する」「権利を取り戻す」という意味があります。リハビリテーションというのは、患者さんや利用者、そのご家族が主体となって行うというところに大きな特徴があります。リハビリテーションには、主治医や看護師ももちろん関わりますが、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、というリハビリテーション専門職とも呼ばれる人達も関わります。さらにそれだけではありません。患者さんの状態によっても変わりますが、義肢装具士、管理栄養士、また退院ですとか制度の調整をする医療ソーシャルワーカーなども含めて実に多くの人たちのチームでもって成り立っています。リハビリテーションの対象となる人は、骨折や事故などによって、体の動きが十分でないという人達はもちろんですが、心臓や呼吸などに制限がある方もそうです。精神的な問題を抱えてらっしゃる方も広く含まれます。また新生児からご高齢の方まで、年齢層も非常に幅広いというところに特徴があります。やはり、これだけ急性期の医療が発展してきておりまので「救える命」が多くなっております。しかし、完全に元に戻るということは、医療でも限界があります。また高齢者の方は、いくつかのご病気をお持ちになりながら、地域で生活をしています。したがって、リハビリテーションの医療においては、救命された患者さん方をいち早く以前の生活できるように、或いは職業に復帰する、学校に復帰するといったような社会参加を踏まえたキューオーエルと呼ばれる人生の質を高めるためのお手伝いをすることも含まれています。

スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪

特別ゲスト:安井 浩樹 先生  (美幌町立国民健康保険病院 呼吸器内科部長)
聞き手:後藤 克幸  (CBC論説室)
後藤 名古屋大学医学部 地域医療教育学寄附講座 准教授として去年までお勤めだった 安井浩樹先生に、スタジオにお越しいただきました。安井先生はこれまで、4年間にわたり「健康ライブラリー」の企画と監修にアドバイスを頂いてきましたが、今年から北海道美幌町の地域医療現場に赴任されることになりました。そのきっかけは?
安井 ここ10年ほど、大学で「地域医療教育」と言いまして、地域医療のことを学生さんや研修医に伝えたり、コーディネートしたりする仕事をずっとしてきたんですけれども、その中で「ぜひ自分も現場の第一線に行ってみたい!」と思ったのが1つと、あともう1つは、北海道が以前からすごく好きで、いつか行ってみたいなという憧れが少しありまして、思いきって決断して行くことにしました。
後藤 北海道は、まさに地域医療の現場としてはいろんな課題も多く抱えていて、問題と直面することになると思いますが、これからの日本の地域の医療、先生ご自身はこれからどんな方向に行くべきだとお考えですか。
安井 後藤さんがおっしゃるように北海道というのは、必ずしも人材を含めた医療資源が恵まれていない地域でありますし、気象条件も非常に厳しい地域でもありますけれども、そんな中だからこそどんな地域医療ができるかなというのがひとつのチャレンジだと思っています。今後の地域医療の課題ですけれども、高齢化の問題などいろいろ言われていますが、やはり究極は、医療の目的は何かと考えますと、患者さん、或いは家族が「HAPPY」に、「よりHAPPY」になること、それからよく後藤さんが言われますけど、「前向き」になることです。そういったことをするのが、地域医療の目的だと思いますので、僕も北海道に行って、北海道の人達と一緒に、「前向きでHAPPYに」なれたら、そんな地域医療ができたらと思っています。
後藤 これは単に北海道だけの問題だけではなくて、日本の普遍的なこれからのまさに課題ですね。
安井 そうですね。北海道の端っこの方ですが、そこでこんなことをやっているんだ、といずれ後藤さんの耳にも届くように発信ができればな、と思っています。
後藤 ぜひ、これからもこの「健康ライブラリー」を見守っていただきたいと思うんですが、健康ライブラリーにこれまで関わってくださった先生の番組への想い、それからリスナーの方へのメッセージありましたら、お願いします。
安井 もっと医療のことも、医療の人のことも、場合によってはお薬のことも、もっともっと知ってもらいたいというのが、後藤さんと一緒にこの番組を作り始めた時の一番のコンセプトだったと思います。もっともっと医療を知っていただいて、参加していただいて、一緒に「HAPPYに、それから前向きに」なっていくようなそんな地域医療ができればなと思っております。
後藤 そのために、やはり情報共有がキーワード、そしてわれわれメディアとの連携もとても大切だと思っていますし、私もぜひ先生と一緒にこれからも情報発信を続けていきたいと思いますけれども、メディアの役割については何か思いを語っていただければありがたいです。
安井 そうですね、非常にメディアの役割は大きいと思っています。非常に影響力も大きいですし、もし万が一、間違った情報が出てしまった場合には、本当に大変な事になってしまう危険性もあると思います。ただ、それだけに大きな力がありますので、繰り返しになりますが、より患者さん、家族、地域が「HAPPYに、前向きになる」という目標を、ぜひわれわれ医療関係者、メディア、そして地域の人達と共有して放送を作っていっていただければなと思っています。
後藤 これから遠く離れても、心をひとつに連携プレー、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。
安井 ありがとうございました。