2016年11月6日放送

教えて!ドクター

(名古屋大学医学部 細胞治療医学講座 教授
名古屋大学医学部附属病院 輸血部 教授 松下 正 先生)

★11月のテーマ「血液と健康」
<血液と私達の健康について>
 血液は、人間の体の中に流れている液体ですが、体重の約7%の分量があります。例えば50kgの体重の人ですと約3.5Lの血液が存在します。これは怪我などで失われても大変なことになります。それだけの分量のものが、様々な栄養や物質を運びながら循環していますので、様々な病気の原因になったりします。もし、血管の中で不用意に固まってしまうとそれは「血栓症」という名前の病気になります。脳の血管で起きますと「脳梗塞」という病気を発症します。心臓を栄耀する冠動脈で起きますと「心筋梗塞」という、これまた大変恐ろしい病気になります。血小板という成分が血液を固めるのに重要な役割を果たします。例えば、動脈硬化あるいは加齢、一般的にお年をめされますとどうしても血管の硬さかたくなってきます。或いは高血圧といった病気、腎臓病といった病気も間接的には血管の中で血液が固まりやすくなってしまう要因になります。血栓症の症状は、めまいがする、或いは手足が痺れる、耳が聴こえにくくなる、目が見えにくくなる、といった脳神経が様々な症状以外にも気を失ってしまう、急に発症して倒れて救急車を呼ぶといった重症なものまで様々なものがあります。或いは心臓の場合ですと、胸が苦しくなる、階段を上がっていると胸がキュッと苦しくなってくるという症状がある方は早めにお医者さんに掛かられることをお勧めいたします。また血小板という成分が少なくなってくる病気がいくつかあります。手足をぶつけた覚えがないのに、痣ができる。或いは「点状出血」と呼んでいますが、小さい細かい赤い斑点が手足に出現する、もしくは鼻血が止まりにくい、或いは歯茎から血が止まりにくいといった症状が出現します。血小板が減少する原因としては、まず「特発性血小板減少症」という病気がございます。これは、国が難病に指定している原因がはっきりしない病気です。こういった病気の場合は、血小板だけが減少して、今申し上げたような症状がでます。これ以外にも、血小板という成分は骨髄という、様々な人間の全身の骨の真ん中部分で発生する病気、例えば「再生不良性貧血」ですとか「急性白血病」といった血液内科で専門の先生に診察を受けるような病気の場合にも同じように血小板減少が起こってまいります。気づいた方は、早めに専門医の先生に掛かり血液検査をすることをお勧めします。

スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪

大城 知恵 さん  (クリニック戸崎 日本糖尿病療養指導士 看護師)

<力を入れて取り組んでいる事>
 糖尿病は自覚症状がないから大丈夫と放っておかれる方もいらっしゃいます。怖いのは血糖値が高いのが続くことによって引き起こされる合併症です。これを防ぐために大切なのは生活習慣の改善と治療の継続です。 私たち療養指導士は、受診される患者さんに採血の時や、待ち時間に生活のワンポイントアドバイスを行っています。また患者さんに合った実践方法を一緒に考えるように心掛けています。また、治療を中断することなく続けていただくために、感じが良く質問しやすい雰囲気づくりや少ない待ち時間となるような業務の効率化を常に意識しています
<心に残っているエピソード>
 1型糖尿病というインスリン注射をしなければ生きていくことさえできない病気があります。
その1型糖尿病の中学生の子が、担任の先生から教室でインスリン注射を禁止されているということを打ち明けてくれました。保健室かトイレで打つように言われたそうです。保健室で注射すると教室に戻ってきた時には友達の食事は終わっていて一人で給食を食べることになる、トイレで注射するのは汚いからいやだ、と注射をしていないとのことでした。1型糖尿病にとってインスリン注射はその人の膵臓と同じなので、どこでも自由に注射する権利を当然持っているはずです。学校側も先生も1型糖尿病に対する正しい理解ができていないと思い、主治医と相談し、学校と教育委員会働きかけたところ教室での注射が認められました。そして、この関わりをきっかけにその子とそのお母さんとの信頼関係が深まり、血糖値も改善しました。小さな情報も時には大きな情報になること。何でも言ってもらえる関係作りが大切だと感じました。
<現場で直面している課題>
 通院を中断した患者さんはひどい合併症となるため、治療を中断する患者さんをひとりでも減らすことが私たちの課題です。一般に通院を中断する糖尿病患者さんは、「あれ食べるな、これはだめ」などと叱られていやな思いをしたとか、治療費が経済的に負担になっているだとか、いろいろな悩みをかかえていらっしゃいます。私たちのクリニックではどんな時も患者さんの病気を治したいという気持ちに寄り添い、支え、いつも前向きなアドバイスを心がけています。このような取り組みが全国の医療機関にも広がることを望んでいます。