番組審議会

2017年

第43回 株式会社CBCラジオ番組審議会

開催日 平成29年6月16日(金)
出席委員
(敬称略・五十音順)
近藤清久 杉浦昭子 団野 誠(副委員長)
堀田あけみ
欠席委員 松尾清一(委員長)
議題 1. 番組審議
平成29年日本民間放送連盟賞 教養番組部門
出品作「1/6の群像」
1. 番組審議
平成29年日本民間放送連盟賞 教養番組部門 出品作
「1/6の群像」
放送日時 平成29年5月27日(土)21:00~22:00放送
プロデューサー 森合康行
ディレクター 森理恵子(テラ・プロジェクト)
音 響 岡田浩志(ティ・プロジェクト)
橘高良政(サウンドバース)
取材協力 太田哲太郎(テラ・プロジェクト)
ナレーション 石井亮次(CBCアナウンサー)
出演 鳥居(歌人)
本田直子(無料塾・塾長)

《制作意図》

  厚生労働省によると2012年の国民基礎調査(現時点で最新の調査結果)で、日本の子どもの貧困率(相対的)は、16.3%に上り「6人に1人の子どもが貧困状態にある」ことが明らかになりました。過去最悪の貧困率という結果を受けて、国は、2013年に生活困窮者自立支援法を成立させました。
 その任意事業のひとつが「生活困窮世帯の子どもの学習支援」である「無料塾」です。現在「無料塾」は、国からの助成金を受けて全国およそ300の自治体で開設されています。名古屋市には、16区・68箇所あります。
 番組では、2014年に開設された名古屋市北区の「無料塾」に焦点を当て、ここに通う子どもたちを通し、教育の空白が、貧困の子どもにどの様な影響を与えるかなどを問いかけます。
 また番組では、歌人・鳥居(三重県出身)さんの短歌朗読を織り込み、貧困の子どもたちの心象風景を描きました。鳥居さんは、児童養護施設やホームレスでの生活を余儀なくされるなど、辛い幼少期を乗り越えて名古屋市北区の図書館で短歌に出会います。歌人鳥居さんが、極貧生活で何を感じてこれまで生きてきたのか?そこには、信じがたい日本の今が見えてきます。
  (鳥居さんは、今年5月に2017度の現代歌人協会賞を受賞しています。)

《番組内容》

     名古屋市北区のビルの一室に、無料塾はあります。本田直子さん(69歳)は、長年の教師生活を終え、3年前にここの塾長となりました。週2回、午後6時になると、元気な中学生たちが、無料塾へやって来ます。ここへ集まるのは、生活保護世帯・生活困窮世帯・ひとり親家庭の子供たちばかりです。
     無料塾は、学習支援だけでなく子供の居場所づくりや親の支援なども目的としていて、授業はいつも和やかな雰囲気で行われています。番組では、この無料塾をおよそ2年にわたり取材しました。
     また、2015年に短歌歌集を出版した三重県出身の鳥居さんは、両親の離婚・母親の自殺・児童養護施設・ホームレス・DVシェルターでの生活など、これまで波乱万丈な人生を送ってきた歌人です。鳥居さんは、名古屋市北区の図書館で初めて短歌に出逢い、創作活動を始めました。今回は、鳥居さん自身による短歌朗読で貧困が生む現代の「生きづらさ」を伝えました。
     番組では、貧困を経験し北区の図書館をきっかけに歌人となった鳥居さんとその北区に今、開設されている無料塾を通し、日本人が持つ一億総中流意識で見えなくなっている「子供の貧困」を考えます。

議事の概要

   《審議委員の主なご意見》

  • きわめて重要な社会問題を提起している高く評価できる番組だ。
  • 世間で言われている「格差社会」の実態がしっかり理解できた。厳しい現実の中でも、無料の塾があり、ボランティアの人もいて、救いの手もあることがありがたいと思った。
  • 一人一人の話から始まり、日本全体の問題へと話を持っていく構成が上手いと思った。最初見えなかった「群像」が後半どんどん見えてきた。
  • 世代から世代へ負の遺産として引き継がれていくこの問題を、どうしたら良いのか深く考えさせられた。名古屋市内だけで68箇所も無料塾がある等の現実を知ってもらうだけでも番組の価値があると思う。
  • 歌人・鳥居さんの作品が優れている。この作品と、彼女の人生をメインにしたヒューマンストーリーに、6分の1の現状を入れ込んでいく手も構成的にあったのではないかと思う。

一覧に戻る

Page up